研究課題/領域番号 |
19K17452
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
神岡 真理子 東京大学, 医科学研究所, 特別研究員 (00835796)
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研究期間 (年度) |
2019-02-01 – 2023-03-31
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キーワード | パネート細胞 / 間葉系細胞 / 糖鎖 / 粘膜免疫 |
研究実績の概要 |
パネート細胞は小腸上皮細胞群の一種であり、抗菌ペプチドを腸管管腔内に分泌することで腸内細菌および病原体の侵入を防ぐ。また隣接する上皮幹細胞の維持に必要な分子を供給し、上皮幹細胞のニッチ形成を行う。上皮幹細胞はすべての小腸上皮細胞に分化するため、パネート細胞は小腸全体の恒常性維持にも寄与すると考えられている。実際、パネート細胞の機能不全は炎症性腸疾患を始めとする病態形成の起点となることが報告されており、その制御メカニズムおよび病態におけるパネート細胞の更なる解析が求められている。 近年、腸管上皮細胞についての遺伝子発現解析が進み、パネート細胞をはじめとする腸管上皮細胞は腸管の部位ごとで異なる遺伝子発現パターンを示すことが報告された。一方、腸炎発症時において、炎症などの病態形成や程度も部位ごとに異なることが報告されており、多くの場合で回腸では病態形成・炎症が見られるが、十二指腸側では観察されない。 パネート細胞が病態形成の起点となることを考慮すると、回腸および十二指腸側のパネート細胞を比較解析することで腸炎発症メカニズムの解明につながる可能性がある。さらに本研究においてはパネート細胞に加え、上皮幹細胞ニッチを担うもう一つの細胞である間葉系細胞を小腸部位ごとに解析することで、パネート細胞と間葉系細胞の連関による腸管恒常性維持機構の解明を目指した。 本年度は昨年度に引き続き、十二指腸・回腸の各部位に位置するパネート細胞の遺伝子解析から得られたデータを基に糖鎖修飾関連遺伝子に着目し研究を進めた。それにより、部位特異的にパネート細胞で発現する糖鎖を特定しており、回腸側に多く発現する糖鎖の生物学的意義を明らかにした。また糖鎖の発現パターンにより分類したパネート細胞サブセットとその分化メカニズムについてまとめた論文をProc. Natl. Acad. Sci.誌に投稿し、受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
回腸で特に多く発現する糖鎖について、パネート細胞の機能に関連してその生物学的意義が解明されたことは自然免疫学のみならず糖鎖科学分野においても新規性が高い。さらに本研究内容の一部を含む論文が学術雑誌に受理されたことから、本研究が順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
糖鎖の発現パターンにより分類されたパネート細胞サブセットと小腸各部位における間葉系細胞の相互関係について検討する。具体的には、パネート細胞における糖鎖発現への間葉系細胞の関与を検討する。また、各パネート細胞サブセットおよび各部位の間葉系細胞の上皮幹細胞ニッチ形成能の比較、また病態形成時のそれらの細胞の遺伝子発現変動を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は論文投稿およびリバイスを中心に行い、それに伴う実験には既存の試薬などを主に用いた。そのため、当初予定していたいくつかの解析および試薬の購入には至らなかった。そのため生じた次年度使用額は、これらの試薬等の購入に使用する計画である。
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