癌治療において免疫チェックポイント分子を標的とする抗体医薬品の登場により担癌患者の抗腫瘍免疫を利用した治療が期待されているが,その治療効果は癌腫や背景にある基礎疾患により異なることが報告されている.本研究では,近年増加する脂肪肝炎を背景とした肝癌患者における抗腫瘍免疫の解明を,特にそのネットワークの中心的役割を担い,抗原提示細胞である樹状細胞(DC; dendritic cell)に着目して行った.対象患者の樹状細胞は,FACSを用いてSSCとFSCにより単核球分画を分離し,さらにLineage陰性・HLA-DR陽性分画を抽出し,その後CD123陽性分画のplasmacytoid DCとCD11c陽性分画のmyeloid DCに分けて、ソーティングを行い,DC数の測定および表面マーカーの解析を行った.またDCの機能として抗原提示能,遊走能,貪食能,サイトカイン産生能の解析を行った.これまでにウイルス性肝炎と比較して脂肪肝炎を背景とした肝癌では,肝組織における腫瘍抗原の発現が同等に認められるにもかかわらず,その腫瘍抗原特異的な細胞傷害性T細胞の誘導に乏しいことを見出してきたが,その誘導に関わるDC数に関しては,末梢血中で差異がないものの,抗原提示能,遊走能,サイトカイン産生能の機能は低下する傾向を認めた.またこの機能低下は,肝の線維化進行と関連する傾向にあった.リンパ球のプロファイルにおいても,ナイーブCD4陽性T細胞におけるCD25陽性細胞の割合において肝の線維化進行との関連が認められた.
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