これまでの研究により、TLR9KOマウスに対してCitrobacter rodentiumを投与し、感染性腸炎を発症させると、腸炎回復後にPost-infectious IBSを発症させ、WTマウスと比較して、顕著な腸管知覚過敏を生じることが判明した。PI-IBSを発症したTLR9KOマウスの腸管を採取し、WTマウスの腸管とともにMicroarray解析を行ったところ、TLR9KOマウスにおいて、強い疼痛を誘導するブラジキニンB2受容体(BDKRB2)の発現が有意に亢進していることが判明した。 そこでBDKRB2の選択的拮抗薬であるイカチバント(遺伝性血管性浮腫の急性発作に対する治療薬)を用いて、PI-IBSによる腸管知覚過敏を改善させることが可能 か検証した。具体的にはC.rodentiumに感染させたTLR9KOマウスに対して腸炎が完全に回復した6週間後に、腸管知覚過敏の標準的な評価方法であるバロスタット を用いて、BDKRB2投与群とコントロール群(生理食塩水投与)とを比較したところ、BDKRB2投与群において、腸管知覚過敏は顕著に抑制されており、PI-IBSの治 療薬となり得ると考えられた。これらの実験結果を踏まえ、今後の計画として、TLR9シグナル欠損とC.rodentium感染により、どのようなメカニズムでBDKRB2の発現が亢進するのかという点に着目して実験を進めていくとともに、ヒトを対象とした臨床研究につながるように準備を進めていく。
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