研究実績の概要 |
肝癌の診療体系の確立のため,早期診断と治療効果判定に使用できるマーカーについて研究している. 2019年度に肝癌診断についてメチル化SEPT9(mSEPT9)をリキッドバイオプシー候補として検討し, mSEPT9コピー数をスクリーニング検査で用いることで肝癌の早期に発見できる可能性があることを報告した(Hepatol Commun. 2020).また、肝癌の治療効果マーカーについて, Lenvatinibの奏効を早期に評価するためAFP減少率40%減が重要であることを報告した(Cancers. 2020). 2020年度は ①レンバチニブの予後因子を体組成が評価できた53症例で検討した.サルコペニアが予後に与える影響について日本肝臓学学会のサルコペニア判定基準を用いて評価した.その結果,肝予備能(mALBI grade 1-2a)及びBCLC AorBに加えて,握力低下がないことが長期生存に寄与していた.さらに,骨格筋量を加味したサルコペニアも独立した予後因子であることを報告した(Applied Sciences 2020). ②慢性肝疾患を背景に持つ肝細胞癌は効率にエネルギー・栄養障害を有することが報告されている.これまで,エネルギー障害の評価には間接熱量計を用いた非タンパク呼吸商(npRQ)が用いられており,npRQ<0.85は予後不良であることが報告されていた.しかしながら,間接熱量計の測定は煩雑でありその簡便な代替マーカーが必要と考えた.慢性肝疾患を背景とした肝細胞癌患者109例を検討して,npRQ<0.85に資する因子を検討した.その結果,ALBI score<-2.18が代替マーカーとして有用であることを見出した(Clinical Nutrition 2020).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のごとく,早期診断マーカーにmSEPT9,治療効果マーカーにAFP減少率が有効であることを報告した.早期診断に既存の腫瘍マーカーであるAFPにmSEPT9を組み合わせることにより診断能が上昇することを報告しており(Hepatol Commun. 2020),現在は,予後予測マーカーとしてのmSEPT9とAFPの組み合わせについて検討中である.mSEPT9はAFPとは相関の乏しい相補的なバイオマーカーであった.進行肝癌に対する分子標的治療薬(Sorafenib・Lenvatinib)症例において,導入時のmSEPT9とAFPを評価した.AFPおよびmSEPT9にカットオフ値を設け、それにより予後が3群に層別化されることを確認している.今後,予後予測から治療方針を含めてマネージメント可能となるよう,治療奏効とmSEPT9の推移について検討中である.
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