研究実績の概要 |
肝癌の診療体系の確立のため,早期診断と治療効果判定に使用できるバイオマーカーについて研究している. 2019年度に肝癌診断についてメチル化SEPT9(mSEPT9)をリキッドバイオプシー候補として検討し, mSEPT9コピー数をスクリーニング検査で用いることで肝癌の早期に発見できる可能性があることを報告した(Hepatol Commun. 2020).その結果を基に,mSEPT9を含めたバイオマーカーによる進行肝癌治療の効率化を図った。 2022年度は分子標的治療薬であるレンバチニブおよびソラフェニブ治療が行われた進行肝癌症例の予後バイオマーカーとしてmSEPT9の有用性を検討した.当施設の症例を用いて,肝癌分子標的治療患者の予後因子として"Performance status"に加えて"AFP"と"mSEPT9"が重要であることを明らかにし薬物療法の予後層別化スコアを作成した.そのスコアの有用性は多施設からの症例を用いて検証しておりこれらの結果を報告した(Hepatol int, 2023). これまでの成果である,レンバチニブの治療予測マーカーとしての“AFP減少率40%"(Cancers. 2020)に加えて,"サルコペニア"がソラフェニブやレンバチニブ治療において予後に与える影響(Liver Cancer,2019, Applied Sciences 2020)と合わせて各バイオマーカーによる治療の効率化が可能となった. さらに,肝癌患者でエネルギー障害の評価の代替マーカーとして,ALBI score<-2.18が有用であることを見出しており(Clinical Nutrition 2020), エネルギー障害を反映した肝予備能と肝癌の治療効果・予後予測バイオマーカーを組み合わせた包括的治療が可能となったと考える。
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