Protein kinase R(PKR)は肝細胞癌において高発現し、癌細胞増殖促進に寄与していることが同定されている。刺激された肝星細胞(HSC)においてもPKRが高発現することが報告されているが、その生理的作用、特にHCCに対する役割は不明な点が多い。そこで、報告者はヒト肝星細胞株(LX-2)を用い、LPSで刺激されたHSCのPKR活性化と、サイトカイン産生を評価した。 LX-2をLPS(100ng/ml)で刺激し、PKR、リン酸化PKR、ERK1/2、JNK、肝星細胞の活性化マーカー(αSMA等)、サイトカイン(IL-1β等)の発現の評価を行った。LPS刺激されたLX-2ではRT-PCRで、PKR、IL-1βの発現が、コントロールと比べ有意に亢進していた。αSMAの発現に変化は見られなかった。ウェスタンブロットで、リン酸化PKRが、LPSで刺激されたLX-2で亢進していることを確認した。また、PKRの下流のMAPK経路の評価をウェスタンブロットで行った。MAPKカスケードの分子であるERK1/2、JNK、c-Fos、c-Junは、LPS刺激によりリン酸化が亢進した。さらに、ELISAでLX-2のIL-1β産生能の評価を行った。ELISAでは、LX-2からのIL-1βの分泌が、LPSによる刺激で増加した。 LPSで刺激したLX-2をPKR阻害剤で処理すると、LPS刺激によるPKRリン酸化、IL-βの産生亢進は打ち消された。 今回の検討により、LPSで刺激された肝星細胞でPKR及びその下流のMAPKカスケードが活性化し、そのPKR依存性にIL-1βの産生が亢進することが示された。
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