前年度は消化管傷害モデルをミニブタを用いて新規被覆剤(シート剤型)の胃ESD後人工潰瘍に対する有用性を明らかにした。前年度の研究から新規被覆材は、ESD後潰瘍の瘢痕化あるいは瘢痕狭窄を抑制する可能性が考えられた。 しかし、シート剤型では、潰瘍部位によって貼付の可否に制限がでることが判明した。そのため、剤型をシート剤から噴霧型製剤へ剤型変更を行った。 医用ミニブタに胃ESDを施行して潰瘍を左右対称性に2ヶ所作成し、1ヶ所に高接着性ゼラチン被覆噴霧剤を噴霧した(Spray:S群)。術後7日、14日目に内視鏡検査を施行、術後14日目に屠殺 し、下記項目を非被覆潰瘍(control;C群)と比較検討した。(1)HE染色、アザン染色および免疫染色にて粘膜下層の炎症 細胞浸潤、線維化、血管新生の発現、(2)固有筋層の萎縮・線維化スコア(atrophy and fibrosis score; AF score)、(3) 固有筋層の肥厚:潰瘍部 と非潰瘍部の固有筋層厚の比(ulcer/non-ulcer; U/NU比)。 S群はC群と比較して、(1)粘膜下層の炎症細胞が有意に少なく、α-SMA陽性細胞が有意に少なかった。また、新生血管数が有意に増加した。(2)固有筋層の萎縮・線維化(AF score)が有意に低下した。(3)固有筋層の肥厚(U/NU比)が有意に低下した。 以上より、新規高接着性ゼラチン噴霧型被覆剤は、これまでのシート剤同様に胃ESD後潰瘍の粘膜下層の炎症・線維化、固有筋層の線維性肥厚を抑制した。
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