これまでの研究にて、消化管傷害モデルをミニブタを用いて新規ゼラチン被覆剤(シート剤型)の胃ESD後人工潰瘍に対する有用性を明らかにした。その結果、新規被覆剤貼付した潰瘍は、(i)粘膜下層の炎症細胞が有意に少なく、α-SMA陽性細胞が有意に少なかった。ii) 新生血管数が有意に増加した。iii)固有筋層の萎縮・ 線維化 (AF score)が有意に低下した。その後、シート製剤は使用部位が制限することから、ゼラチン噴霧型製剤にその剤形を変更し、シート剤同様、クラウン系ミニブタを用いた検討を行った。その結果、噴霧製剤を噴霧した胃ESD後の人工潰瘍は、噴霧しない潰瘍にくらべ(i)粘膜下層の炎症細胞が有意に少なく、α-SMA陽性細胞が有意に少なかった。(ii)固有筋層の萎縮・ 線維化(AF score)が有意に低下した以上より、新規高接着性ゼラチン噴霧型被覆剤は、胃ESD後潰瘍の粘膜下層の炎症・線維化、固有筋層の線維性肥厚を抑制したことを明らかにした。さらに噴霧製剤の ESD後潰瘍穿孔閉鎖能力について検討した。ミニブタを用いた十二指腸ESD潰瘍微小穿孔モデルにて噴霧製剤をESD後潰瘍に噴霧することにより、筋層および漿膜側への炎症を 抑制可能であった。本年度は、ミニブタを用いて食道ESD後狭窄モデルを作成し、ゼラチン噴霧型製剤の狭窄抑制効果について検討した。その結果、本製剤を噴霧することにより、食道狭窄率を有意に抑制し(90.6% vs 76.1% p<0.05)、粘膜下層の炎症細胞浸潤の抑制(p=0.0012)および筋層肥厚の抑制(p<0.01)を認めた。しかし、HGFの生体内での不安定さの改善に時間を要しており、HGFを噴霧製剤へ含浸させる点が解決できていない。
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