研究課題
肝細胞癌細胞に対するBRD4阻害剤の抗腫瘍メカニズムを明らかにするため、まず肝癌細胞株9株に対するBRD4阻害剤JQ1の増殖抑制効果を検証した。IC50は0.046~9.575 μMであり、6株の高感受性株と2株の中等度完成株、1株の抵抗性株に分かれた。JQ1はHuH-7、HLE、Hep3Bなど高感受性株に対し、細胞周期停止やアポトーシスを高度に誘導した。一方、抵抗性株PRC/PRF/5では細胞周期停止およびアポトーシスの誘導は最小限であった。これらのことから、BRD4阻害剤は多くの肝癌細胞株において抗腫瘍効果を示す事が明らかとなった。先行研究では、BRD4阻害剤により肝癌細胞のMYCおよびE2F2遺伝子発現が抑制されることが報告されている。そこでHuH-7、HLE、HepG2の3種類の肝癌細胞株を用いて、複数のJQ1濃度条件下(0.5 μM、1.0 μM、2.0 μM)で、これらの遺伝子発現の変化を経時的(6、24、48時間)に定量RT-PCR解析した。興味深いことに、MYC発現は薬剤処理開始から6時間後に大きく低下し、24~48時間後には薬剤処理開始前レベルまで回復することが明らかとなった。一方、E2F2発現は時間依存的な低下を示し、48時間後に最低レベルとなった。これらのことから、BRD4阻害による発現抑制は遺伝子ごとに異なるパターンを取る可能性が示唆された。BRD4阻害剤が肝癌細胞の遺伝子発現プロファイルに与える影響を網羅的に解析するため、9株の細胞株をJQ1 (1.0 μM)あるいはDMSOで24時間処理した。抽出したtotal RNAをSurePrint G3 Human GEマイクロアレイで解析し、アレイデータを取得した。
2: おおむね順調に進展している
一連の肝癌細胞株に対するBRD4阻害剤の抗腫瘍効果を評価し終えた。また既知のBRD4標的遺伝子に対する発現レベルを解析し、遺伝子ごとに異なるパターンがあることを明らかにした。さらにBRD4阻害剤が遺伝子発現プロファイルに与える影響をマイクロアレイ解析し、アレイデータを取得した。
取得したアレイデータをもとにGene Ontology解析やPathway解析などのバイオインフォマティクス解析を行い、生物学的意味を明らかにする。また肝癌細胞における新規のBRD4標的遺伝子を同定する。同定した遺伝子の発現、ヒストンアセチル化状態、BRD4結合などを明らかにする。また同定した遺伝子の機能解析を行い、肝癌における役割を明らかにする。
本年度は実験補助員の人件費を計上していたが、研究代表者自身で予定していた実験計画を円滑に遂行することができたため、当該年度は人件費を計上しなかった。次年度使用額は、実験に必要な試薬消耗品と実験補助員の人件費に充てる計画である。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Clin Epigenetics
巻: 11 ページ: 70
10.1186/s13148-019-0668-3
Haematologica
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10.3324/haematol.2018.191262