研究実績の概要 |
申請者らは、これまでにアンギオテンシンII拮抗剤(ARB)がHippo-YAP経路の制御を介して肝内胆管癌の発育を抑制することを明らかにしてきた。本研究では肝内胆管癌に対するNOTCH1選択的阻害剤(NOTCH1-i)の治療効果、さらにNOTCH1-iとARBの併用による相乗効果について、Hippo/YAP経路の制御に注目して基礎的に検討した。In vitroの検討において、2種類のヒト肝内胆管癌株にNOTCH1-i(Interprotein社)およびARB(ロサルタン)両薬剤を添加したところ、両薬剤ともに単剤で細胞増殖を用量依存的に抑制し、アポトーシスを誘導した。さらに、ERK、AKTのリン酸化およびCleaved Caspase-3の発現を有意に抑制していた。また、NOTCH1-iの添加により、下流のHey/HesやSox9の発現の低下が確認できた。さらに両薬剤を併用したところ、増殖抑制・アポトーシス誘導効果が増強された。 次にヒト肝内胆管癌株を用いたxenograftを作成し、皮下腫瘍の病理学的、分子生物学的検討を行った。その結果、ARB投与、NOTCH1-i投与により腫瘍細胞の増殖抑制、アポトーシス細胞の増加が認められ、両剤併用ではその効果が各単剤に比べて顕著であった。さらに、両剤投与により皮下腫瘍内のCD34陽性血管新生が有意に抑制されていた。また興味深いことに、in vitro、in vivoの検討においてNOTCH1-i単独群においてもYAP活性を反映する下流のCTGF,CYR61,ANKRD1,MFAP5のmRNA発現レベルは低下を認め、NOTCH1-YAP pathwayの抑制が関与している可能性が考えられた。 以上のことから、NOTCH-iとARBの併用は強力にHippo-YAP経路を制御することで、肝内胆管癌の発育を抑制することが明らかとなった。
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