研究課題/領域番号 |
19K17474
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
深田 浩大 順天堂大学, 医学部, 准教授 (20727482)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | NETosis / NETs / アルコール性肝炎 / 非アルコール性脂肪肝炎 / NASH |
研究実績の概要 |
病原微生物を殺処理するための自然免疫の特殊な機序として、好中球がクロマチンや抗菌ペプチドから成るNETsを放出して重要な役割を果たしているNETosisが発見された。NETosisはネクローシスやアポトーシスと違う細胞死の過程であり、近年、注目を浴びている。 アルコール性肝炎や非アルコール性脂肪肝炎といった肝疾患においては組織学的には好中球を中心とした炎症細胞が中心静脈を中心に炎症を起こしていることが知られている。 本研究ではアルコール性肝炎や非アルコール性脂肪肝炎の発症・伸展にNETosisが関与しているかを検証することを目的としている。 2019年度は、既存の論文を参考にELISA法による血清中のNETsの測定系を確立した。 アルコール性肝障害モデルマウスであるNIAAAモデルを作成した。NIAAAモデルはマウスに5%エタノール含有のLieber-DeCarli液体飼料を10日間投与し11日目にエタノール(5g/kg)を強制経口投与し作成した。経口投与後に1時間、2時間、6時間、10時間後に解剖した。それぞれの血清中のNETsをELISA法で測定した。NIAAAモデルではNETsの優位な上昇を確認できなかった。 臨床検体としては入院適応となるような重篤な肝機能障害を呈した患者の血清を収集した。背景肝疾患についてはアルコール性肝炎だけでなく対象としてウイルス性肝炎なども含まれている。それらの患者血清を用いて、臨床検体におけるNETs産生をELISA法で定量的に測定し評価した。重症型アルコール性肝炎患者の一例からNETsの産生を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、既存の論文を参考にELISA法による血清中のNETsの測定系を確立した。 アルコール性肝障害モデルマウスであるNIAAAモデルを作成しNETsを測定した。NIAAAモデルではNETsの優位な上昇を確認できなかったため、今後は他の動物モデルを用いてのELISAでのNETs測定を検討している。 入院適応となるような重篤な肝機能障害を呈した患者の血清を収集した。背景肝疾患についてはアルコール性肝炎だけでなく対象としてウイルス性肝炎なども含まれている。それらの患者血清を用いて、NETsをELISA法で定量的に評価した。重症型アルコール性肝炎患者の一例からNETsの産生を認めた。今後は引き続き重症の肝炎患者の血清を収集しNETsの測定を続けていく。 以上、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(2020年度)は、アルコール性肝炎マウスモデルを用いた解析では優位なNETsの上昇を認めなかった。このモデルでは肝臓に強いNETosisが生じず血中にNETsが放出されていない可能性が考えられた。そのため、他のより刺激の強いアルコール性肝炎モデルや急性肝炎モデルのマウスを用いてELISA法でのNETs測定を検討している。 臨床検体については重症型アルコール性肝炎患者の一例からNETsの産生を認めた。これはアルコール性肝炎の病態は肝組織で好中球を中心とした炎症細胞が中心静脈に炎症を起こしていることからNETosisを起こしているのではないかという我々の仮説の通りであった。次年度では引き続きアルコール性肝炎患者を中心に他の肝炎患者で入院適応となるような重症肝炎患者の血清を収集しNETsの測定を続けていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度の研究結果から、アルコール性肝炎マウスモデルを用いた解析では優位なNETsの上昇を認めなかった。このモデルでは肝臓に強いNETosisが生じず血中にNETsが放出されていない可能性が考えられた。そのため、他のより刺激の強いアルコール性肝炎モデルや急性肝炎モデルのマウスを用いてELISA法でのNETs測定を検討することとした。そのため本研究に関わる予算の一部を次年度(2020年度)に繰り越した。
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