病原微生物を殺処理するための自然免疫の特殊な機序として、好中球がクロマチンや抗菌ペプチドから成るNETsを放出して重要な役割を果たしているNETosisが 発見された。NETosisはネクローシスやアポトーシスと違う細胞死の過程であり、近年、注目を浴びている。 アルコール性肝炎や非アルコール性脂肪肝炎といった肝疾患においては組織学的には好中球を中心とした炎症細胞が中心静脈を中心に炎症を起こしていることが 知られている。 本研究ではアルコール性肝炎や非アルコール性脂肪肝炎の発症・伸展にNETosisが関与しているかを検証することを目的としている。 2019年度は、既存の論文を参考にELISA法による血清中のNETsの測定系を確立した。アルコール性肝障害モデルマウスであるNIAAAモデルを作成しNETsを測定した が検出は乏しかった。 2020年度は、エタノール経口投与後LPS腹腔内投与による急性肝障害モデルマウス、アセトアミノフェン肝障害モデルマウス、NIAAAモデルにコンカナバリン静脈 投与による肝炎モデルマウスを作成し血清中のNETsを測定したが検出は乏しかった。 臨床検体としては入院適応となるような重篤な肝機能障害を呈した患者の血清を収集を継続した。背景肝疾患についてはアルコール性肝炎だけでなく対象として ウイルス性肝炎なども含まれている。それらの患者血清を用いて、臨床検体におけるNETs産生をELISA法で定量的に測定し評価した。重症型アルコール性肝炎患 者の一例からNETsの産生を認めたものの、アルコール性急性肝炎患者の検体からはNETsは検出されなかった。2021年度は肝障害モデルマウス肝に抗Ly6b抗体および抗CitH3抗体による免疫染色を用い、NETs産生を検出を試みたが検出に難渋した。
|