研究課題/領域番号 |
19K17479
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
川本 泰之 北海道大学, 大学病院, 特任助教 (60755601)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 腫瘍内細菌叢 / 膵臓癌 / 超音波内視鏡下針生検 |
研究実績の概要 |
膵臓癌は全癌腫の中でも最も予後不良である。近年、細菌が様々な疾患の発症や治療効果に関わる因子として注目されており、膵臓癌においても腫瘍内に細菌が存在することが報告されてきている。腫瘍内細菌の有無は化学療法の有効性に関連する可能性が示唆されつつあるが、これまでのところ臨床的に検討した研究はない。既報では腫瘍内細菌の検出のために手術検体を用いているが、実地臨床で化学療法を行う対象である進行膵癌は手術適応外であり、手術検体を入手することが困難である。本研究は、これまでに報告されていない超音波内視鏡下針生検(EUS-FNA)による膵臓癌腫瘍内細菌の検出の可能性を明らかにすることを目的としている。本研究の結果により、EUS-FNAにより腫瘍内細菌が検出できることが判明した場合、手術非適応症例に対する化学療法の有効性と腫瘍内細菌の関係が検討可能となり、適切な薬剤の選択や予後の改善などを期待できる可能性がある。 本研究では、目標症例数を30例とし、2019年5月から検体収集を開始した。腫瘍内細菌の由来を検討するため、EUS-FNA検体採取時に、胃粘膜・十二指腸粘膜も同時に収集することとした。2020年3月31日までで予定の30例の検体収集を終了した。 今後、採取検体より核酸抽出を行い16S rRNA領域プライマー設計及びPCR増幅によるライブラリーを作成する。引き続いて、次世代シークエンサーを用いて配列解析を行い、得られた配列を用いて16S rRNAデータベースに対する相同性検索および系統分類解析を実施し、採取検体に含まれる細菌の種類および割合などを解析する。得られた腫瘍内細菌の情報と、診療録から得られる、対象者の基本情報、血液検査所見、画像検査所見、病理学的所見、治療情報・アウトカム等との関連を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、目標症例数を30例とし、2019年5月から検体収集を開始した。腫瘍内細菌の由来を検討するため、EUS-FNA検体採取時に、胃粘膜・十二指腸粘膜も同時に収集することとし、1例につき3検体を採取することとした。2020年3月31日までで予定の30例の検体収集を終了した。 当初の予定とほぼ同等のペースで検体収集が終了したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後、採取検体より核酸抽出を行い16S rRNA領域プライマー設計及びPCR増幅によるライブラリーを作成する。引き続いて、次世代シークエンサーを用いて配列解析を行い、得られた配列を用いて16S rRNAデータベースに対する相同性検索および系統分類解析を実施し、採取検体に含まれる細菌の種類および割合などを解析する。得られた腫瘍内細菌の情報と、診療録から得られる、対象者の基本情報、血液検査所見、画像検査所見、病理学的所見、治療情報・アウトカム等との関連を検討する。今年度内での解析、結果の公表を行える見込みである。 本研究の結果により、EUS-FNAにより腫瘍内細菌が検出できることが判明した場合、手術非適応症例に対する化学療法の有効性と腫瘍内細菌の関係が検討可能となり、適切な薬剤の選択や予後の改善などを期待できる可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、検体の解析を外部の検査会社に依頼している。検体解析料金の当初見積額との変更があったことと、当初計画よりも進展があり、症例集積が順調に進んでいるため解析の一部を前倒しすることとなり、解析費用が不足することが予想されたため、前倒し支払請求を行った。 前倒し支払いを受けた額よりも、実際の解析費用が若干低額だったため、残額が生じた。この残額を次年度使用額とした。 解析総検体数には変更はなく、研究全体での解析費用には変更はないため、今年度の残額と令和2年度分の交付予定額とを合わせて、残りの解析費用とする予定である。また結果の公表に関わる費用にも充当予定である。
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