研究課題
本研究では目標症例数を30例として開始し、2019年5月から2020年3月までの間に予定の30症例から膵癌腫瘍検体を収集した。腫瘍内細菌の由来を検討するため、EUS-FNA検体採取時に、胃粘膜・十二指腸粘膜も同時に収集し、合計90検体が収集された。採取検体より核酸抽出を行い16S rRNA領域プライマー設計及びPCR増幅によるライブラリーを作成した。引き続き、次世代シークエンサーを用いて配列解析を行い、得られた配列を用いて16S rRNAデータベースに対する相同性検索および系統分類解析を実施し、検体に含まれる細菌の種類および割合などを解析した。検体解析成功率は、膵癌EUS-FNA:80%、胃粘膜:100%、十二指腸粘膜:97%であった。系統分類から、それぞれの採取部位における細菌叢の分布は異なることが示された。菌種および細菌叢組成割合の検討から、穿刺部位からのcontaminationは否定的と判断した。膵癌FNA検体におけるα多様性は胃・十二指腸粘膜よりも低く、β多様性の検討では膵癌FNA検体と十二指腸粘膜では組成が異なることが示された。また、膵内の原発巣部位や制酸剤の使用による多様性の偏りは認めなかった。本研究の結果により、EUS-FNAにより膵癌腫瘍内細菌が検出可能と判明した。今後、血液検査所見、画像検査所見、病理学的所見、治療情報・アウトカム等との関連を検討する。それらの結果から、手術非適応症例に対する化学療法の有効性と腫瘍内細菌叢の関連の検討が可能であり、適切な薬剤選択やそれによる予後の改善、細菌叢に対する治療と膵癌治療アウトカムの検討などが今後の目標である。
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