本研究は肝幹・前駆細胞の分化において分化系統を決定する上で、ヒストンメチル化酵素であるSetdb1が重要な働きを持つことを証明し、この事象を再生医療に応用することを目標とした。肝細胞と胆管細胞は共通の肝幹・前駆細胞から分化するが、Setdb1遺伝子のノックアウトにより肝幹・前駆細胞が胆管細胞へ優先的に分化することを見出した。さらに、Setdb1コンディショナルノックアウトマウスの肝幹・前駆細胞が胆管細胞へ分化することを形態学的、遺伝子発現により検証することに成功した。 その後Setdb1標的遺伝子群の同定を進め、肝幹・前駆細胞において、Setdb1ノックアウト細胞における各遺伝子のエピジェネティック修飾の変化と、それに伴う遺伝子発現量の変化を調べるために、野生型とSetdb1をノックアウトした肝幹・前駆細胞のRNAシークエンスを実施しようと複数回試みたが、最終的に解析に十分な細胞数が確保できなかった。
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