研究課題
本年度は当初研究計画に従い「大腸粘膜構成細胞群におけるシングルセル遺伝子解析系の構築」および「JAK阻害薬投与によるJAKファミリー分子活性化プロファイル解析」及び「JAK阻害薬投与による粘膜構成細胞群応答・細胞間連関の解析」について研究を実施した。その結果、以下の様な成果を得ている。1)大腸粘膜構成細胞群におけるシングルセル遺伝子解析系を構築するため、潰瘍性大腸炎患者由来オルガノイド(UC, n=4)、およびクローン病患者由来大腸オルガノイド(CD, n=1)を用い、マイクロ流路系とMultiplexPCR法によるシングルセル解析の条件検討を行った。この結果、小腸オルガノイドを用いた既報(J Gastroenterol)と概ね同条件にて単一細胞レベルの分離、RNA抽出及び逆転写反応が実施可能であった。更に既知の幹細胞関連の10遺伝子について検討を行った結果、いずれも小腸オルガノイドと同様の遺伝子発現レベルの評価が可能であった。2)上記にて得られたシングルセル遺伝子発現データについて主成分解析を行った結果、大腸由来オルガノイドのUC及びCD間では明らかな違いは認めなかったが、患者由来小腸オルガノイド(n=6)と大腸由来オルガノイド(n=5)の比較においては異なるグループにと考えられる分布を示し、部位間の差異を検出可能な解析系として機能していることが確認された。3)JAK阻害剤投与を行った対象患者について、大腸内視鏡検査(のべ29件)及び生検組織の採取(n=27)を実施した。いずれも疾患活動性に関する臨床的評価(内視鏡スコア等)が可能であることが確認された。以上の結果より、大腸粘膜構成細胞群におけるシングルセル遺伝子解析系を構築し、これに基づく細胞特性の違いを示すことが可能であることが明らかとなった。また、対象となる患者の臨床的評価が可能であることも確認された。
2: おおむね順調に進展している
当初計画における大腸粘膜構成細胞群におけるシングルセル遺伝子解析系の構築、及び対象患者における情報収集が可能であることが確認されていることから、当初計画に沿って概ね順調に進捗していると考えている。
本年度計画は概ね順調に推移していることから、当初計画に沿い、次年度以降は対象患者由来の検体を用いた解析の継続、ならびにin vitroモデルの構築と検証、ならびに治療効果予測因子・効果判定因子の探索について解析を行う計画である。
・次年度使用額が生じた理由:試薬等が計画当初より廉価で購入可能であった為。・使用計画:検討する数・種類を拡大して解析を行う為、試薬を増量して購入する予定である。
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