肝硬変を背景とした肝細胞癌患者では、根治的治療後でも肝細胞癌が高率に再発し、再発 率は年間約20-25%、5年では70%以上に上ることから肝細胞癌の再発抑制が治療上極めて重要な課題である。そのため、肝線維化・肝硬変による肝発がん機序を解明し、新規治療法につながる基礎研究が重要である。 申請者の研究室は、これまでに国内新規肝細胞癌再発抑制薬ペレチノインが数種類のマウスモデル及びヒト臨床検体を用いて肝線維化・血管新生・肝発がんを抑制することを報告してきた。申請者は、新規肝細胞癌再発薬ペレチノインを用いたこれらのDataから肝線維化及び肝細胞癌の発癌に関わる因子を探索し、新規肝細胞癌再発因子ピルビン酸キナーゼ・マッスル(PKM)を新たに同定した。申請者は、ヒト臨床検体及びこれまでのモデルマウスから肝線維化病態進行及び肝細胞癌の悪性度の進行に伴いPKMのバリアントであるPKM1とPKM2共に発現が増加することを発現解析から確認した。PKM1は、肝星細胞を活性化させ筋線維芽細胞に形質転換することで肝線維化病態を亢進させた。また、PKM2は悪性度の高い肝細胞癌部位では核に発現することが確認できた。PKM2は、Notch1の細胞内ドメインNICDと複合体を形成し、核内のCSLを介して肝細胞癌の悪性度を高めている役割があることを示せた。これらの研究成果から、肝線維化を基盤とした肝発がん病態は、PKM2単独よりPKM1とPKM2の両方を標的とした発現を阻害する治療戦略が効果的であることを明らかにした。
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