研究課題
1、腸管上皮細胞株やヒトオルガノイドを用いた実験にて、PARD6Bが、ロタウィルス、コレラ毒素の感染後に分解されることを同定しており、どのようなシグナルが分解を誘導するかを検討した。PARD6Bは、aPKC、CDC42と複合体を形成しており、ロタウィルスやコレラ毒素の感染で、CDC42が活性化されることが分かった。また、CDC42の阻害剤を加えると、ロタウィルス感染後もPARD6Bの分解が誘導されなかった。以上の結果より、ロタウィルス感染がCDC42を活性化させ、PARD6Bの分解を誘導していると考えられた。また、腸管出血性大腸菌、サルモネラではPARD6Bの分解は誘導されなかった。2、ロタウィルス腸炎や炎症性腸疾患におけるPARD6Bの機能を検討するため、ノックアウトマウスの作製を行っている。PARD6Bは、ヒト、マウスの腸管上皮に局在しており、腸管上皮特異的なコンディショナルノックアウトマウスを作成中である。PARD6Bと複合体を形成するCDC42の阻害剤の投与により、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導性腸炎モデルにおいて、コントロール群と比較して腸炎スコア、体重減少の改善を認めた。また阻害剤投与群では、腸管透過性亢進の改善を認めた。タイトジャンクションに発現する分子の発現を比較したところ、ZO-1の発現低下が抑制されていることが分かった。3、潰瘍性大腸炎患者(UC)の腸管組織におけるPARD6Bの発現を免疫組織学的染色法にて検討したところ、健常人と比較してUC患者では、腸管上皮に高発現していた。また、UCの活動期では、寛解期と比較してより高い発現を認めた。
3: やや遅れている
腸管上皮細胞株を用いた実験は、順調に進展している。また、ヒトの腸管組織におけるPARD6Bの発現は、腸管上皮において、潰瘍性大腸炎の活動期で高発現するという結果が得られており、検体数を増やして、分析を行っている。PARD6B floxマウスの作製のため、受精卵にCRISPR発現ベクターとドナーベクターをインジェクションし、偽妊娠メスマウスの卵管に移植をしたが、産子が得られず、再度ベクターを作成しており、ノックアウトマウスの作製が遅れている。そのため、PARD6Bと複合体を形成するCDC42の阻害剤を用いて、ウィルス腸炎、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導性腸炎におけるPARD6Bの機能を検討している。
PARD6B floxマウスが産まれれば、villin-creマウスと交配させ、PARD6Bコンディショナルノックアウトマウスを作製し、腸管上皮の構造、機能をコントロール群と比較し、ロタウィルス腸炎、DSS腸炎を誘導し、腸炎における機能を検討する予定である。PARD6Bと複合体を形成するCDC42の阻害剤を投与すると、DSS腸炎の抑制効果を認めることから、機序を検討していく。ヒトの腸管組織におけるPARD6Bは、潰瘍性大腸炎の活動期では高発現しており、検体数を増やして検討していく。
PARD6Bコンディショナルノックアウトマウスの作製が遅れており、マウスの解析に伴う試薬、飼育量、交配させるマウスの購入が次年度になっており、次年度使用額が生じている。
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