研究課題
腸管上皮細胞は、病原体や腸内細菌に対する防御機構を持ち、その破綻は腸管感染症、炎症性腸疾患 (IBD)の進展に強く関与する。多くの病原体や腸内細菌は、細胞内へ侵入する際、エンドサイトーシスを利用する。研究代表者らは、エンドサイトーシスを促進する新たな分子としてPARD6Bを同定した。さらに、腸管上皮細胞がPARD6Bの分解誘導を介して、エンドサイトーシスを阻害し、病原体の侵入を食い止めるという新たな防御メカニズムを見出した。本研究では、1) PARD6Bの分解を誘導するシグナルの同定、2) 腸炎モデルマウス、IBDモデルマウスを用いた機能解析による、PARD6Bを介した防御機構の解明、3) IBD患者の予後予測マーカーとなりうるかの検証を行った。ロタウィルス感染後のPARD6Bの発現を経時的に測定したところ、感染早期にPARD6B/aPKC複合体がプロテアーゼ依存性に分解されることが分かった。さらに、細胞内へは侵入せず増殖しない非活性型(virus-like particle)のロタウィルスをヒトの腸管オルガノイドに感染させたところ、活性型のロタウィルスと同程度にPARD6Bの分解を誘導した。このことから、PARD6Bはウィルスの増殖に伴って、分解が誘導されるのではなく、細胞膜への結合により、分解が誘導されることが分かった。また、スフィンゴ糖脂質への結合がPARD6Bの分解誘導に必要なことを同定した。次に、腸管特異的Pard6bコンディショナルノックアウトマウスを作製した。ノックアウトマウスでは、下部小腸から右側大腸にかけての炎症を認め、DSS誘導性腸炎の増悪を認めた。臨床検体では、PARD6Bの発現とIBD患者の予後との相関は認めなかったが、活動性と相関を認めた。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件)
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