研究課題/領域番号 |
19K17487
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宇座 徳光 京都大学, 医学研究科, 助教 (30447958)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 潰瘍性大腸炎 / 自己抗原 / 自己抗体 |
研究実績の概要 |
1.潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis: UC)患者の血清中IgGを抽出し、これを用いて自己抗原候補タンパク質Xに対する反応をELISA法を用いて解析した。UCのみならず、クローン病や感染性腸炎を含めたコントロール群を積極的に集積し解析を行った。結果は、感度95%、特異度95%と、予備実験の結果(感度92%、特異度93%)に比べて、さらに精度の高い結果が得られた。また、抗X抗体IgGのサブクラス解析を行った結果、主たるIgGサブクラスはIgG1であることが明らかになった。 2.日常診療で汎用されるUCの疾患活動性指標と抗X抗体との相関解析を行った。まだ少数例の検討であるが、既存の疾患活動性指標であるpartial mayo scoreと同様に抗X自己抗体は疾患活動性と有意に相関していた。この結果から、抗X自己抗体は、侵襲を伴う内視鏡検査を施行せずとも、簡便で汎用性の高いUC診断の特異的マーカーとなり得ることが期待できる。 3.UC患者およびコントロール症例の大腸組織におけるタンパク質Xの発現を免疫組織学的解析およびWestern blotting法にて検証した。コントロール症例の大腸組織では、タンパク質Xの発現をほとんど認めなかったが、UC患者の大腸組織では、その発現が著明に上昇しており、その分布は大腸上皮に限局していた。 4.UC患者より抽出した抗X抗体をマウスに投与し、UC患者と同様な腸炎所見を誘導し、その病原性について検討を行っている。現時点では、少数例の検討であるが、肉眼及び組織学的に炎症の誘導は明らかではない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.自己抗原候補タンパク質Xに対するUC患者血清中の抗X抗体の検討については、概ね順調に研究が進行しており、今後もさらなる症例集積を行っていく。 2.UCの疾患活動性と抗X抗体との相関解析に関しては、少数例の検討なので、今後もさらなる症例の集積をする。 3.UC患者およびコントロール症例の大腸粘膜上皮におけるタンパク質Xの発現解析に関しては、少数の解析にとどまっている。これはUC患者、コントロール患者ともに大腸切除に至る症例が少ないことに起因する。当院および関連病院にも協力を得て症例の集積に努める。 4.UC患者から採取した抗X抗体によるマウスへのUC様腸炎誘導実験では未だ明らかな典型的所見を得ていない。これは使用できる血清量が限られていることと、腸炎を誘導するのに適切なIgG濃度を決定できていないことに原因があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1.自己抗原候補タンパク質Xに対するUC患者血清中の抗X抗体の検討については、今後多施設の協力を得てさらなる症例を集積し、これをvalidation cohortとして検証を行う予定である。 2.UCの疾患活動性と抗X抗体との相関解析に関しては、今後も症例の集積を行い、抗X抗体が簡便かつ汎用性の高い診断マーカーとなり得るかを追求していく。 3.UC患者およびコントロール症例の大腸粘膜上皮におけるタンパク質Xの発現解析に関しては、大腸切除に至る症例が少ないことから、少数の検討にとどまっている。今後は当院および関連施設にも協力を得て症例の集積に努める。 4.UC患者からの抗X抗体によるマウスへのUC様腸炎誘導実験では、この後も患者への血清提供の協力を進めると同時に、腸炎誘導に適切なIgG濃度の決定を行っていく。 さらに、今後は上記の研究を継続して進めていくと同時に、(1)上記で解析したUC患者を追跡し、その後の病状と抗X抗体の変動を検討し疾患活動マーカーとなり得るか検証する。(2)抗X抗体の大腸粘膜障害メカニズムの解析を行う。(3)自己抗原候補タンパク質Xを投与しUCモデルマウスの作製を試みる。
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