研究課題/領域番号 |
19K17488
|
研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
中堀 輔 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), 肝胆膵内科, 副部長 (60795160)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | B型肝炎 / アミノ酸代謝 |
研究実績の概要 |
慢性肝炎患者の肝組織ではHBs抗原陽性細胞とHBsAg陰性細胞は不均一に分布し、HBs抗原陽性領域ではHBs抗原陰性領域と比較し、pregenomeRNA (pgRNA)やcccDNAは有意に高い。そこで、肝癌手術切除検体非癌部のホルマリン固定パラフィン包埋組織を用い、HBsAg陽性領域およびHBsAg陰性領域における宿主の遺伝子発現を、次世代シークエンサーにて網羅的に解析した。発現に差異を認める宿主遺伝子を複数選定することができた。同定した遺伝子の中の1つはアミノ酸代謝に関連する遺伝子であり、本研究ではHBV感染によるアミノ酸代謝リプログラミングに注目し、解析を行った。 ヒト肝細胞キメラマウスより単離した初代培養ヒト肝細胞モデルでは、HBV感染により選定した遺伝子の発現は上昇し、感染細胞におけるアミノ酸代謝や培養上清中のアミノ酸は変化した。次に、同定した遺伝子の発現を抑制および亢進させ、B型肝炎ウイルスの生活環における意義を解析した。HBV感染後に遺伝子発現を抑制するとウイルス複製は抑制され、選定した遺伝子はウイルス複製の過程に関与していることが示唆された。また、HBV関連蛋白の一つであるHBxを肝癌細胞株に強制発現させると、同定したアミノ酸代謝関連遺伝子の発現は上昇した。一方で、HBsおよびHBc蛋白を強制発現させてもこれらの遺伝子発現は変化しなかった。 以上の結果から、HBV感染細胞では、HBxによりアミノ酸代謝のリプログラミングが起こり、ウイルス複製を制御している可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究機関の変更に伴う環境の調整とコロナウイルス感染症蔓延に伴う研究活動の制限のため。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、課題初年度の解析結果を検証するため、単一細胞レベルでの解析を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
使用する検体の準備や実験計画は既にできており、本年度に予定していた解析を次年度に行う。
|