B型肝炎患者の肝臓には、HBs抗原陽性細胞とHBsAg陰性細胞が不均一に分布している。HBs抗原陽性細胞が集簇している領域ではHBs抗原陰性細胞が集簇している領域と比較し、pregenomeRNA (pgRNA)やcccDNA の発現が有意に高かった。一方、宿主の遺伝子については、次世代シークエンサーを用いて発現を網羅的に解析したところ、差異を認める宿主の遺伝子を複数選定することができた。それらの中で、本研究では分枝鎖アミノ酸のアミノ基転移酵素であるBCAT2(branched chain amino-acid transaminase 2)に注目し、HBV感染によるアミノ酸代謝リプログラミングを解析した。 HBs抗原陽性細胞が集簇している領域およびHBs抗原陰性細胞が集簇している領域から抽出したRNAを用い、RT-PCR法にて、HBs抗原陽性細胞が集簇している領域ではHBs抗原陰性細胞が集簇している領域と比較し、BCAT2の発現が高いことを検証した。 ヒト肝細胞キメラマウスにHBVを接種すると、10-12後にほとんどすべてのヒト肝細胞がHBs抗原陽性となる。HBV接種10-12週後のヒト肝細胞キメラマウスの肝臓では、HBVを接種していないヒト肝細胞キメラマウスと比較し、BCAT2の発現は高かった。 B型肝硬変由来の肝癌の手術切除検体非癌部を用い、シングルセル解析を行う方針とした。予備実験として、転移性肝癌患者の切除組織非腫瘍部を用い、単一細胞を分離したところ、8.34*10e5個の細胞を単離することができ、生細胞率は82%であった。一方、肝癌切除検体非癌部5例より肝細胞単離を試みたが、生細胞率は24-34%だった。良好な生細胞率を得られず、単離時の生細胞率は背景肝の炎症や線維化に依存すると考えられた。
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