研究課題/領域番号 |
19K17494
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
田中 久美子 徳島大学, 病院, 特任助教 (80792382)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Peutz-Jeghers syndrome / 小腸ポリープ / マイクロアレイ解析 |
研究実績の概要 |
現時点で、Peutz-Jeghers syndrome(PJS)における小腸ポリープ、正常粘膜のマイクロアレイ解析までが終了している。 具体的には、PJSの症例に対して、ダブルバルーン小腸内視鏡検査を施行し、小腸ポリープおよび正常粘膜の生検を行った。その検体からRNAを抽出し、T7 oligodT primer, T7 RNA polymeraseを用いて増幅するとともに、Cy3による蛍光標識を行い、ヒト全ゲノムcDNA chip (Whole Human Genome 4x44K v2, Agilent)とハイブリダイゼーションを行った。さらに、解析ソフトウェア(Array-Pro Analyzer)によりスキャニング・データの解析を行った。これによって得られた小腸ポリープにおける遺伝子発現と、正常粘膜における遺伝子発現をサブトラクションして、小腸ポリープにおける特異的な遺伝子発現Signatureを作成しているところである。また、予防薬として用いることができる薬剤について、本邦で承認されているものを中心に、抽出している途中である。 これまでの研究で、PJSの小腸ポリープと正常粘膜における遺伝子発現の違いが明らかとなり、ポリープの特徴が判明しつつある。抗腫瘍効果を持つ薬剤の発見に近づいており、PJS患者の小腸ポリープによる腸重積の回避や、発がんリスクの軽減に寄与できることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PJS患者の小腸ポリープおよび正常粘膜の組織採取のためには、小腸ポリープがある場所を小腸カプセル内視鏡検査もしくは小腸造影検査にて把握したのち、入院してダブルバルーン小腸内視鏡検査を行う必要があり、患者の入院までの調整にやや時間を要した。そのため小腸ポリープおよび正常粘膜のマイクロアレイ解析、また小腸ポリープにおける遺伝子発現Signatureを作成するのが予定より遅くなった。 小腸ポリープおよび正常粘膜の組織採取はすでに終了しているため、今後オルガノイド培養と、予防薬の抗腫瘍効果の調査はスムーズに進行できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、小腸ポリープにおける遺伝子発現Signatureの作成を完了し、Connectivity Mapを用いて、ポリープ抑制に作用する薬剤を上位100種類選択する。次に、今後ヒトを対象とした臨床試験に進むことを想定し、本邦で承認されている薬剤のうち予防薬として用いることができる薬剤30~50種類に絞り込む。その後、小腸ポリープと正常粘膜のオルガノイド培養を行い、候補薬のうち、in vitroで消化管ポリープに高い細胞障害性を示し、正常上皮に細胞毒性を示さないものを選択する。最終的には、小腸ポリープのオルガノイド培養細胞をマウスの十二指腸に移植し、ポリープが発育したことを確認後に予防候補薬を経口投与し、抗腫瘍効果を評価する。また、残存するポリープの病理組織診断、各種免疫染色、TUNEL染色などを行い、ポリープに対する抑制効果の機序を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に物品の納品が完了したが支払が翌月4月となったため、次年度使用額が生じた。研究計画に変更は生じないため、次年度も計画に従って研究を進める。
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