初年度は、Peutz-Jeghers syndrome(PJS)の症例に対して、ダブルバルーン小腸内視鏡検査を施行し、採取した小腸ポリープおよび正常粘膜組織からRNAを抽出してマイクロアレイ解析を行った。最終年度は、得られた小腸ポリープと正常粘膜における遺伝子発現をサブストラクションし、ポリープにおける特異的な遺伝子発現Signatureを作成した。これを元にConnectivity Mapを用いて、ポリープに抑制的に働く薬剤を35種類選択した。また、採取した小腸ポリープ、正常粘膜組織からそれぞれオルガノイドを樹立することに成功した。そこで、予防候補薬として選択した35種類の薬剤を、小腸ポリープ及び正常粘膜由来のオルガノイド培地に種々の濃度で添加し、48-72時間後に感受性試験(WST-8 assay)を行い、Cell viabilityを測定してIC50を算出した。その結果、ポリープにのみ高い細胞障害性を示す薬剤を最終的に3種類選択した。今後は実際にヌードラットの十二指腸に小腸ポリープのオルガノイド培養細胞を移植し、3種類の予防候補薬を経口投与して腫瘍縮小効果を確認する。また、LKB1ノックアウトマウスに予防候補薬を経口投与し、その予防効果を検討する。さらに、残存ポリープについて、Ki67やPCNAなどの免疫染色、TUNEL染色などを行い、ポリープ抑制効果の機序を調べる予定である。
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