研究課題/領域番号 |
19K17496
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 正剛 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (20837265)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 非アルコール性脂肪肝炎 / NASH / 低酸素 / hypoxia inducible factor / zonation |
研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は肝脂肪化を基盤として、炎症・線維化が起きる病態であるが、その発症機序は解明されていない。NASHの肝脂肪化は中心静脈周囲に起き、また特徴的な線維化の一つに中心静脈周囲線維化が挙げられることから、NASHにおける肝脂肪化から炎症・線維化へと進展する根源的な病理変化は中心静脈周囲(zone 3)の生物学的特性に強く関連していると考えられる。そこでNASHモデルマウスの肝臓をzone別にサンプリングし、網羅的遺伝子発現解析を行う実験を計画した。 MC4R欠損マウスに高脂肪食を20週間給餌しNASHモデルを作製し、組織学的に低酸素を評価するため、肝臓をサンプリングする1時間前にpimonidazole HClを60mg/kg腹腔内投与を行った。凍結切片を用いて免疫組織化学を行い、zone 3の肝実質が低酸素となっていることが確認できた。この所見は予備的検討においてzone 3肝実質でHIF2-αの発現が亢進していたことと一致していた。次に、未固定凍結切片を用いてレーザーマイクロダイセクションによりzone別にサンプリングを行った。当初、抽出したRNAの品質を評価する指標であるRINが3前後と不十分な結果であり、肝臓に内在する豊富なRNaseが原因と考えられた。薄切後の切片にRNAlaterを滴下することにより、RNase活性を抑制し、氷上で染色するプロトコールを考案し、RNA-seqに要求される品質のRNAを得ることができた。得られたRNAは微量であったが、RNA-seqのライブラリ作製方法を修正することにより、RNA-seqを行うことがで、現在RNA-seqで得られたデータの解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NASHモデルマウスは順調に作製できており、サンプリングした肝臓の免疫組織化学的評価を行い、今回の研究で着目しているzone 3が低酸素状態にあることを組織学的に明瞭に示すことができた。また、レーザーマイクロダイセクションによりRNA-seqを行う上で必要な品質のRNAを得るためのプロトコールも確立し、微量のRNAサンプルからRNA-seq用のライブラリ調整にも成功し、RNA-seqのデータを解析中である。次年度以降に網羅的遺伝子発現解析を行う予定であるNASH臨床検体も60例程度集まっており、概ね順調に研究が進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
RNA-seqのデータを解析し、各zoneに特異的に発現している遺伝子 (zone特異的遺伝子) とNASHモデルマウスにおいて発現変化を認める遺伝子 (NASH関連遺伝子) を同定する。これらの遺伝子の内、肝細胞表面に発現しているタンパクをコードするものをピックアップし、これらのタンパクに対する一次抗体を用いてfluorescence-activated cell sorting (FACS) により初代肝細胞をzone毎に分離する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に同定した多数のマーカータンパク質に対する一次抗体を次年度に購入し、免疫組織化学やFACSを行う予定としており、試薬購入費用が増大するため次年度使用とした。
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