研究課題
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は肝脂肪化を基盤として、炎症・線維化が起きる病態であり、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)患者の約10-20%がNASHへと進展し、残りは非アルコール性脂肪肝(NAFL)と呼ばれる。NASHの肝脂肪化は中心静脈周囲に起き、また線維化も中心静脈周囲から生じることから、根源的な病理変化は中心静脈周囲(zone 3)の生物学的特性に関連していると考えられる。そこでNASHモデルマウスの肝臓をzone別にサンプリングし、網羅的遺伝子発現解析を行った。MC4R欠損マウスに高脂肪食を20週間給餌することによりNASHを発症させ(NASH群)、野生型マウスに普通食を給餌する群を対照群とし、野生型マウスに高脂肪食を給餌する群をNAFL群とした。肝未固定凍結切片を用いてレーザーマイクロダイセクションにより門脈域、zone1、zone 2、zone 3の4領域に分けてサンプリングを行った。抽出したRNAのRINを改善させるプロトコールを確立し、更に微量RNAからのRNA-seqライブラリ作製方法を複数回修正し、RNA-seqを実行した。本年度はRNA-seqで得られた網羅的遺伝子発現データの解析を行った。NASH群にのみ認めるDEGを959個同定し、階層的クラスタリングにより10個のクラスターに分け、3群の4領域それぞれの遺伝子発現を評価し、zone 3のみで発現が増加あるいは低下しているクラスターを同定した。エンリッチメント解析により得られた所見の一つとして、NASH群の遺伝子発現がzone 3で亢進しているクラスターの内、内皮細胞の遺伝子発現キャラクターが強いクラスターにおいてIL-17シグナル経路の関与が示唆された。今後、NASH発症機序におけるT細胞と類洞内皮細胞の相互作用を明らかにする実験を行う予定としている。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件)
Toxicology and Applied Pharmacology
巻: 434 ページ: 115817~115817
10.1016/j.taap.2021.115817
BMC Gastroenterology
巻: 22 ページ: -
10.1186/s12876-022-02213-0
Journal of Neuroinflammation
巻: 18 ページ: -
10.1186/s12974-020-02059-x