研究実績の概要 |
脂肪毒性の主要な原因となる飽和脂肪酸(パルミチン酸)と腸内細菌叢がもたらすリポポリサッカライド(LPS)が非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の病態にどのように関与するかを肝細胞が分泌するexosomeの観点から研究している。 パルミチン酸刺激により肝細胞中のセラミド合成が増加すること、また肝細胞が分泌するexosomeが増加し、そのexosomeにはセラミドが豊富に含まれていることは以前の実験で確認されており、これに加えLPSの添加がセラミド合成やexosome分泌のさらなる増加につながるかを検証している。 仮説としてはLPSが脂肪酸からセラミドを合成するために必要な変換酵素であるSPTをTLR4を介して増加させると考えており、現在in vitroの実験として肝細胞株を用いて、パルミチン酸刺激をした細胞、LPS刺激を加えた細胞、両方の刺激を加えた細胞を用意し、様々な条件下でTLR4やSPTの変化を調べている。 具体的にはパルミチン酸濃度を100uM, 200uM, 300uM, 400uMと変え、12時間、16時間、24時間と作用時間も変化させ、SPT,TLR4のmRNAをqPCRを用いて測定している。LPSも同様に濃度を変化させ検証している最中である。パルミチン酸の添加によりTLR4のmRNAが上昇することは今回の実験で明らかになったが、現時点ではまだ、TLR4やSPTに最も影響を及ぼすパルミチン酸とLPSの濃度、作用時間の最適な条件は見いだせていない。引き続きさまざまな条件下での実験を繰り返し、TLR4、SPTのmRNAを測定し検証していく必要がある。
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