慢性臓器障害に起因した肝硬変をはじめ、肺線維症や腎硬化症、虚血性心筋症に伴う心筋線維化は、「過剰な線維化」が更に臓器障害を起こし、機能不全まで進展する病態である。我々は、今までTRL4欠損骨髄移殖のモデルを用いてTLR4の細胞内経路を介する肝線維化消退への影響を確認した。Post-phagocytic in vitroで誘導した回復性骨髄由来回復性マクロファージにてTAK-242によるTLR4シグナルの阻害で細胞外基質の線維化消退に寄与するMMP12の発現低下を認めた。また、肝線維化の消退期に4種合剤抗菌薬による腸管除菌を行なった群は非除菌群より肝線維化消退が有意に遷延した。肝線維化消退期の肝内CD11b陽性免疫細胞のSingle-cell RNA sequencing解析では、消退期のみに増える回復性マクロファージのTlr4の発現を確認した。 マウス腸管内細菌叢16S rRNA比較解析ではErysipelotrichaceae科の腸内細菌を単離し、胆汁酸のdeconjugationに関わる酵素の遺伝子発現を有することを確認した。それは肝線維化招待期の門脈血清ならびに糞便中の胆汁酸変化(tauro-beta-MCAの低下)に一致した。 マウス肝線維化の回復期に肝臓内核内受容体を網羅的に検討したところ、胆汁酸の恒常性維持のみならず、脂質・糖質代謝や免疫調節機能を有するFarnesoid X受容体(FXR; 遺伝子Nr1h4)の有意な発現上昇を認め、腸管由来PAMPsを介するTLR4だけでなく、肝臓や腸管に機能し胆汁酸を介するFXRにも制御される可能性が示唆された。 また、人を対象とする肝硬変患者の観察研究では、特にAcute-on-chronic肝不全の「再発」と「誘因」の関連についての臨床表現型の特徴を特定した。
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