申請者らは腸管常在菌であるAkkermansia muciniphila (A. muciniphila) の腸管定着が膵臓におけるI型IFN・IL-33経路の活性化を抑制し、実験的慢性膵炎の発症を防止することを見出した。この知見から、A. muciniphilaに対する免疫反応を介する慢性膵炎の発症抑制機序を解明し、A.muciniphilaに対する免疫反応を用いた慢性膵炎の新規治療法を提案することを目的に研究を行った。昨年度までの研究で、A.muciniphilaの死菌の経口投与により一定の膵炎症抑制効果が認められたため、本年度は、Reporter Gene Assayを行うことで、A. muciniphilaは、TLR2及びTLR4を効率良く活性化することが判明した。次に、TLR2・TLR4の単独欠損及び2重欠損マウスを作成し、A. muciniphilaが膵炎抑制のために活性化する自然免疫反応受容体の同定を行った。TLR2およびTLR4単独欠損マウスではいずれの単独欠損マウスにおいても、野生型マウスとの比較で、A.muciniphila投与に伴う膵炎抑制効果が見られたのに対し、TLR2・TLR4 2重欠損マウスでは、膵炎抑制効果は認められなかった。このことから、A. muciniphila投与による膵炎の発症抑制には、TLR2およびTLR4の両方が関与していることが示唆された。本菌が膵炎抑制のために活性化する自然免疫担当細胞を骨髄移植マウス用いて検討した。その結果、免疫細胞特異的TLR2・TLR4 2重欠損マウスでは菌投与による膵炎発症が抑制されなかったことから、A.muciniphilaによる膵炎発症抑制のためには免疫細胞が重要な役割を果たしていることが示唆された。今後、RNAシークエンスによるA. muciniphilaの膵炎発症抑制に働く免疫経路の同定を行う。
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