研究課題
米国ハーバード大学で開発に携わったCross-polarized(CP)-micro optical coherence tomography (OCT)を用いて、冠動脈に内在する尿酸塩結晶の可能性と動脈硬化性病変との関連を見出した。尿酸塩結晶は、CP-micro OCTによって画像化可能であり、3次元構築することでその針状形態をも描出できるため、コレステロール結晶のような他の結晶成分と弁別できることを見出した。痛風患者において、非痛風患者と比べ尿酸塩結晶が増大していることを見出した。本結果は、2019年11月8日米国アトランタで開催された痛風・尿酸関連疾患学会(G-CAN)において、若手研究者賞最優秀賞を受賞した。同時に、米国心臓協会年次学術集会にて発表の機会を得た。本研究は、現在論文投稿、修正中である。所属機関においては、急性冠症候群の連続症例13例より、血栓を採集し、偏光顕微鏡と質量分析法を用いて、結晶成分が存在するか解析を進めている。同時に、臨床現場において痛風を合併する心血管疾患患者に対して、Dual-energy source CT(DECT)を用いて連続的に冠動脈の撮影を行い、血管壁において尿酸塩結晶に特異的な信号が発生するか、検討を進めている。その準備段階として、尿酸塩結晶、ハイドロキシアパタイト、コレステロール結晶を用いたファントムを作成し、DECTの至適撮像条件の検討を行った。現在まで、同意を得られた痛風合併の心疾患患者4名に対して、心臓DECTを施行した。次年度は、心臓カテーテル検査を受検する患者に対して、前向きにDECTを撮像し、カテーテルの際にOCTを施行して血管の内外からの画像を比較する予定であり、現在院内の倫理委員会に対して申請を行っている。
3: やや遅れている
CP-microOCTの開発に関する論文投稿のプロセスに時間を要しており、本技術の臨床応用が遅れる見込みである。代替法として、血栓のサンプリングと上述のDECTを用いた臨床研究を進めた。現在まで血栓は13例より採集済み、DECTは3例に対して施行した。血栓の評価においては、コレステロール結晶以外に微小針状結晶の存在を確認しており、同時に質量分析による評価を加えている段階である。
次年度は、痛風・尿酸塩血症合併例に対するDECT撮影を単施設前向きの検討として推進する。DECTを撮影した患者に対して、カテーテル検査時にOCTを施行することで、冠動脈内の微小な構造物とDECTの信号との関連を探索する目的に行う。CP-microOCTを用いた研究では、尿酸塩結晶の沈着が冠動脈疾患の形成を促進する可能性が示唆された。本知見に基づき、OCTで視認できるコレステロール結晶や石灰化病変と、尿酸沈着の表すDECTの信号との関連性を検討していく予定である。
今年度は、CP-micro OCTに関する論文投稿と、偏光顕微鏡のための附属機器購入に留まったため、支出が想定より少なかった。次年度以降、OCT,CP-micro OCTの画像解析のためにWork stationの購入や組織検討用に複数の試薬購入を検討しており、こちらに繰り越すこととした。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件) 図書 (2件)
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