研究実績の概要 |
2021年度は, ブタモデルの開発を行った。ブタ冠動脈壁にスコアリングバルーンで割面を作製し人工的に精製した尿酸塩結晶を局所に注入する方法を試みた(N=6)。急性期実験として, 冠動脈局所に尿酸塩結晶が留まることを組織学的に確認し得た。目下, 慢性期実験を行うべく適正な飼育期間を探索している段階にある。当初米国ハーバード大学と連携しPS-microOCTを開発し動物モデルに応用する計画であったが、COVID-19の影響で中断を余儀なくされた。代替手段として, 低侵襲のDual-energy CTを用いた尿酸画像研究を開始した。予備検討では, 高尿酸血症合併例は非合併例に比較し, 冠動脈の尿酸塩結晶の信号が高度であった(N=12 vs. N=10)。重症冠動脈疾患例では適切に尿酸低下療法がなされていながら, 尿酸塩結晶が残存している例も多く, 結晶が局所炎症に寄与している可能性が示唆された。此の事に関連して, 血管炎症評価法としてCTによるfat attenuation index(FAI)の測定系を当施設内で確立した。冠動脈心筋内走行をもつ患者を対象に, 異常走行部位周囲の炎症状態を評価した。その結果, 特に近位部において動脈硬化形成性と関連してFAIが上昇していることを突き止めた。第二に, 心筋梗塞例の吸引血栓(25検体)を用いたEx vivoの研究に着手した。偏光顕微鏡下に結晶を多く認める血栓において, NETosisが高頻度に発生することを突き止めた。結晶成分を多く含む血栓では, 炎症性と血栓性が亢進しており, 再灌流後の完全な血流再開(TIMI3)が得られにくいと分かった。
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