卵円孔開存(patent foramen ovale: PFO)は奇異性脳塞栓症と関連しており、本邦で2019年10から保険償還されたPFOカテーテル閉鎖術を施行するにあたり、奇異性脳塞栓症を発症し得るハイリスクなPFOであるか、判断することの重要性が高まってきている。本研究は、経食道心エコー図でのPFOの形態や機能に関して、奇異性脳塞栓症のリスク因子を明らかにし、それらをスコア化し、臨床上有効な指標を開発することを目的とした。 奇異性脳塞栓症のPFOと非脳塞栓症のPFOを比較したところ、奇異性脳塞栓症を生じたPFOは、大きな卵円孔の開存で多い右左シャント量、長いトンネル長、心房中隔の可動性、静脈弁遺残、PFOと下大静脈の低い角度を、高頻度に認めていた。それらの5つのリスク因子をそれぞれ1ポイントずつにスコア化したところ、奇異性脳塞栓症を生じたPFOの割合は、合計0ポイントで5%、1ポイントで17%、2ポイントで80%、3ポイントで87%、4ポイントで89%であり、奇異性脳塞栓症の割合は、2ポイント以上で著明な上昇を認めた。本研究の結果から、経食道心エコー図で上記のリスクを2つ以上複数有しているPFOは、奇異性脳塞栓症と特に関連が深くハイリスクであることが推測され、PFOカテーテル閉鎖術の適応を考慮するうえで、非常に有効な指標となり得ると考えられた。 本研究は、循環器領域だけではなく脳卒中領域においても大きな注目を集め、さまざまな学術集会で講演を行った。また、有力な海外雑誌に論文発表を行うことができた。国内および海外でPFOカテーテル閉鎖術の適応に関して、非常に重要なエビデンスを構築することができたと考えている。
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