睡眠障害は心不全の発症リスクを増加させ、生命予後を悪化させるとされており、睡眠障害への介入による心不全予後改善効果が期待されるものの、その機序が未解明であるため確立された治療法は存在しない。本研究では、大動脈縮窄術(TAC; transverse aortic constriction)を行った心不全モデルマウスを用いて、心不全が概日リズムに及ぼす影響、概日リズム異常による心機能やオートファジーへの影響、メラトニンによる治療効果の検討を目的として研究を行った。 本年は、手術を施行した野生型C57B/6Jマウスのうち、Sham群11匹、心肥大群16匹、心不全群7匹において、術後8週間目に記録した概日リズムの記録データの比較検討を行った。結果、テレメトリーシステムで記録された概日リズムは3群とも同様であり、日中と比較し夜間で活動量の増加を認めた。しかし、夜間の活動量を比較すると、Sham群と比較し、心肥大群、心不全群で徐々に活動量の低下を認めた。 また、オートファジーに関与するAtg5の心筋細胞特異的ノックアウト(KO)マウスを用いて同様の検討を行った。上記マウスは術後2週間で心不全を発症するため、2週間後に概日リズムの測定を行った。結果、野生型マウスの心不全群と同様に概日リズムは保たれていたものの、夜間の活動量の低下を認めた。 以上より、野生型マウス及びにAtg5の心筋細胞特異的KOにTACを施行した心不全モデルいずれにおいても、活動量は低下するものの概日リズムが保たれていることが確認された。これらのモデルを用いて、引き続き、睡眠障害への介入による心不全予後改善効果に関する検討を継続していく予定である。
|