研究実績の概要 |
これまでに循環器疾患診療実態調査(JROAD)のDPCデータベースの解析により、MINOCAはMI-CADと比較し、院内死亡の予後不良因子であるが、冠攣縮やたこつぼ症候群によるMINOCAの院内死亡のHRは低く、心筋炎や大動脈解離に伴うものはHRが高く、MINOCAの院内死亡のリスクは、その病因によることを報告した(Int J Cardiol. 2020;301:108-113.)。また、MINOCAの危険因子として黄砂及びPM2.5の短期曝露がケースクロスオーバーデザイン法での解析により明らかとなった(Eur J Epidemiol. 2020;35(5):455-464., Eur J Prev Cardiol. 2020 Feb 11:2047487320904641. )。 そこで大気汚染, とくに黄砂の短期曝露が生体へのどのような作用を介してMINOCA発症へ至るかを検討するために、約30万人の健診データベースを使用し、黄砂の短期曝露と血圧、脈拍への影響を検討した。結果、健診当日の黄砂の短期曝露は、収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)、脈拍(PR)との有意な関連を認めた(β = 1.85, 95% confidence interval (CI) 1.35-2.35 for SBP, β = 2.24, 95% CI 1.88-2.61 for DBP, β = 0.52, 95% CI 0.14-0.91 for PR) 。この結果より、黄砂曝露による生体への影響として交感神経系の活性を介した血圧・脈拍上昇の可能性が示唆された。
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