動脈硬化や心筋梗塞といった心血管疾患の病態において「炎症反応」の重要性が示されている。インフラマソームは自然炎症経路の一つであり、心血管疾患の病態に共通する無菌性炎症の惹起に寄与する細胞内タンパク複合体である。インフラマソームの制御機構の解明は新たな治療法の開発に繋がることが示されているが、その機構は未だ不明な点が多い。そこで、インフラマソームの制御機構解明のため、インフラマソーム複合体を精製して質量分析による網羅的な解析を行った結果、E3ユビキチンリガーゼであるARIH2(Ariadne homolog 2)を同定した。その後の解析によりARIH2はRING2ドメインを介してNLRP3のNACHTドメインをユビキチン化し、そのユビキチン鎖にはK48とK63の両方が関与していることを明らかにした。ARIH2のインフラマソーム活性化への影響を検証するため、ARIH2を欠損あるいは高発現させて調べたところ、ARIH2欠損ではインフラマソームの活性化が増強するとともに、危険シグナルによるIL-1β産生もさらに増強する。一方でARIH2高発現ではインフラマソームの活性化やIL-1β産生は有意に減弱した。これらの結果から、我々が同定したARIH2は、ユビキチン鎖のK48/K63を介してNLRP3インフラマソームの活性化を負に制御していることを示し、NLRP3インフラマソームの新たな活性化制御機構を明らかにした。ARIH2の役割をさらに検証するため、Cre-loxPシステムを利用したARIH2-floxマウスとCre-LyzMマウスとの交配により、マクロファージ特異的 ARIH2欠損(時期特異的)マウスを作製、標的細胞のARIH2欠損を確認し、初代培養細胞を樹立している。
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