研究課題/領域番号 |
19K17541
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
尾上 武志 産業医科大学, 医学部, 非常勤医師 (50772703)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 大動脈弁狭窄症 / 酸素消費量 / 混合静脈血酸素飽和度 |
研究実績の概要 |
59例の大動脈弁狭窄症の症例に酸素消費量測定を行い、全身代謝と心拍出量間に有意な相関を認めた(r=0.74, p<0.001)。またその相関関係が心疾患のない30例と変わらなかったことから、ASが心拍出量に与える影響は小さく、全身の酸素消費量低下が大動脈弁狭窄症例における心拍出量低下と非常に大きな関係性を持っていることが判明した。その結果から奇異性低流量低圧較差重症大動脈狭窄症の発生機序について考察し、投稿したところAm J Physiol Heart Circ Physiolにアクセプトされた(2019 Apr 1;316(4):H840-H848. doi: 10.1152/ajpheart.00715.2018.)。さらに、代償された大動脈弁狭窄症は心拍出量を低下させないと判断されることから、奇異性低流量低圧較差重症大動脈弁狭窄症の混合静脈血酸素飽和度(SvO2)は低下していない可能性がある。SvO2を求めるには通常は入院の上で肺動脈内にカテーテルを挿入する手技が必要になるが、入院となる奇異性低流量低圧較差重症大動脈弁狭窄症の症例は少ない。そこで、酸素消費量(VO2)、ヘモグロビン濃度(Hb)、心拍出量(CO)、動脈血酸素飽和度(SaO2)からFickの式を用いて混合静脈血酸素飽和度を非侵襲的に推定する方法を考えた[VO2 (ml/min) = CO (L/min) x Hb (g/dL) x 1.36 (ml/g) x (SaO2 - SvO2) / 10]。臨床的に右心カテーテルが必要と判断されSvO2を実測できた症例を対象に非侵襲的SvO2のデータの取得を開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では奇異性低流量低圧較差重症大動脈弁狭窄症における全身の代謝活性の影響を評価し、その発生機序を考察する、という段階であった。2019年度に論文がアクセプトされたため当初の計画は達成できたと判断できる。さらに、大動脈弁が心拍出量に与える影響は少ないことを裏付けるため混合静脈血酸素飽和度(SvO2)に注目した。現在、非侵襲的にSvO2を求める方法を考案し、データを取得中である。
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今後の研究の推進方策 |
混合静脈血酸素消費量(SvO2)を非侵襲的に求める方法を考案したため、実測のSvO2と比較検討する。右心カテーテル検査で入院された方を対象に非侵襲的な検査である呼気ガス測定、採血、心エコー、経費的酸素飽和度測定を行い、酸素消費量(VO2)、ヘモグロビン濃度(Hb)、心拍出量(CO)、動脈血酸素飽和度(SaO2)を求める。それらをFickの式に代入して混合静脈血酸素飽和度を推定する[VO2 (ml/min) = CO (L/min) x Hb (g/dL) x 1.36 (ml/g) x (SaO2 - SvO2) / 10]。得られたデータと右心カテーテルで肺動脈内の実測されたSvO2のデータと比較検討を行う。 いい結果が得られた場合、本法を用いて大動脈弁狭窄症の症例のSvO2の評価も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
病院より酸素消費量測定機器の修理が行われ問題なく稼働出来る状態であったため、呼気ガス測定機器に使用する予定の全額が未使用となった。今年度から新たに混合静脈血酸素飽和度を非侵襲的に求める研究を初めており、データ取得や画像解析に必要な機器を揃えるために未使額を使用する予定である。
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