奇異性低流量低圧較差重症大動脈弁狭窄症(PLFLPG AS)の症例がなぜ心拍出量低下をきたすか、という本来の研究については2019年にAm J Physiol Heart Circ Physiol にアクセプトされた。その内容を補足するためにPLFLPG AS症例では全身の酸素の需要と供給のバランスが取れている、混合静脈結酸素飽和度(SvO2)が低下していない、という点を証明する事とした。SvO2、本来は右心カテーテル検査で侵襲的に求める必要があるが、非侵襲的な方法で求めるために、Fickの式:全身の酸素消費量≒1.36×(血中ヘモグロビン濃度)×(心拍出量)×(動脈血酸素飽和度ーSvO2)を用いる事とした。全身の酸素消費量は呼気ガス検査から、血中ヘモグロビン濃度は採血から、心拍出量は心エコー図検査から、動脈血酸素飽和度は指先のパルスオキシメーターから非侵襲的に求める事でSvO2を非侵襲的に求める事が可能になると考えた。右心カテーテルを予定した47人(男性:29人、平均年齢70±12才)に対して、実測のSvO2と上記方法から得た計算されたSvO2を比較したところ、計測されたSvO2はわずかに小さかったものの(計算されたSvO2 70±5.1% vs 実測SvO2 72.1±4.9%)、有意に相関し(γ=0.79)、相対的誤差は4.8%(1.8ー7.4%)、絶対的誤差は3%(1.3ー5.2%)と許容範囲であった。それらの結果を論文に投稿したところ、Am J Physiol Heart Circ Physiol にアクセプトされた。令和3年度はPLFLPG AS症例においてSvO2が低下しているかどうかを評価していく予定であったが、研究代表者が2021年6月にアメリカへ留学することになり本研究は一時中断している。帰国後に速やかに再開する予定である。
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