研究課題
昨年までの研究で、 Celastramycin は抗炎症作用、抗酸化作用、ミトコンドリア機能改善作用を示し、肺高血圧症患者由来の肺動脈平滑筋細胞の異常細胞増殖抑制の機序として考えられた。本年は、その機序として、CelastramycinがZinc finger protein C3H1という蛋白の阻害作用を通してそれらの作用を持つことを、SiRNA、プラスミドを使ったノックアウト、過剰発現モデルを使ったin vitro実験により示した。また、セラストラマイシンは酸化ストレスに応答するタンパク質Keap1を抑制することで、その下流にあるNrf2タンパク質を強力に活性化し、優れた酸化ストレス抑制効果を示すことが確認された。これらセラストラマイシンの機序研究は、肺動脈性肺高血圧症の新規原因蛋白の探索にも役立ち、特にZinc finger protein C3H1については、まだその機能が未知であることが多いため、今後の研究対象として有望である。Nrf2については、その活性化薬が海外にて肺動脈性肺高血圧症に対する臨床試験が進んでおり、これも有望なターゲットと考えられ、Nrf2の阻害作用を持つkeap1の阻害薬はまだ実用化されておらず、Celastramycinはkeap1阻害薬としても有望である。また、誘導体の実験や、ADMEの研究を薬学部、AMED構造展開チームと共同で行い、リード化合物としてのセラストラマイシンの最適化を進めた。本研究成果は、6月 14日(米国東部時間、日本時間6月15日)に米国心臓協会(American Heart Association, AHA)の学会誌であるCirculation Research 誌(電子版)に掲載された。
2: おおむね順調に進展している
実験計画における研究を概ね全て、順調に進められており、論文化も達成したため。
引き続き、セラストラマイシンの最適化研究、ADME研究を進める。また、可能であれば臨床研究に進めるために協力してくれる企業を探索する。
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Circulation Research
巻: 125(3) ページ: 309,327
10.1161/CIRCRESAHA.119.315229.