昨年までの研究で、 Celastramycin は抗炎症作用、抗酸化作用、ミトコンドリア機能改善作用を示し、肺高血圧症患者由来の肺動脈平滑筋細胞の異常細胞増殖抑制の機序として持つこと、CelastramycinがZinc finger protein C3H1という蛋白の阻害作用を通してそれらの作用を持つことを、SiRNA、プラスミドを使ったノックアウト、過剰発現モデルを使ったin vitro実験により示した。これらセラストラマイシンの機序研究は、肺動脈性肺高血圧症の新規原因蛋白の探索にも役立ち、特にZinc finger protein C3H1については、まだその機能が未知であることが多いため、今後の研究対象として有望である。Nrf2については、その活性化薬が海外にて肺動脈性肺高血圧症に対する臨床試験が進んでおり、これも有望なターゲットと考えられ、Nrf2の阻害作用を持つkeap1の阻害薬はまだ実用化されておらず、Celastramycinはkeap1阻害薬としても有望である。また、誘導体の実験や、ADMEの研究を薬学部、AMED構造展開チームと共同で行い、リード化合物としてのセラストラマイシンの最適化を進めた結果、Celastramycinについての一通りの研究は進めることができた。 本年度は東北大学で進めている他の候補薬の治験準備とともに、Celastramycinの臨床応用のための研究費獲得を目指してきた。臨床研究に進むために協力してくれる企業はまだ見つけることができなかったため、今後の研究の展開としては、引き続きセラストラマイシンの最適化研究、ADME研究、研究費獲得を続け、臨床での使用のため準備を進めていく必要がある。
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