研究実績の概要 |
がんサバイバーの増加に伴い、薬物療法や放射線治療の心毒性による心血管疾患の重要性が認識され始めた。また、高齢化に伴い急増している前立腺癌に対する治療は、薬物的去勢術が外科的去勢術と同等の効果があることが示され、現在では薬物的去勢術のホルモン療法が選択されることが多い。性ホルモンの心筋イオンチャネルへの作用により、QT間隔が変化することは知られている。しかし、ホルモン療法による心毒性、とくに心筋イオンチャネルへの影響によるQT延長や致死的不整脈の関係については、未だ検討されていない。本研究は、増加する前立腺癌患者のホルモン療法による、催不整脈性を明らかにする。当院で2006年4月から2017年12月までにgonadotropin-releasing hormone analogues (leuproreline 3ヶ月毎に11.25 mg皮下注, またはgosereline 1ヶ月毎に3.6 mg皮下注) またはgonadotropin-releasing hormone antagonists (degarelix 3ヶ月毎に80 mg 皮下注)の治療を行った前立腺癌患者を対象とした。ホルモン療法開始前とホルモン療法中の心電図のパラメータを比較した。心電図パラメータと致死性不整脈の関連について調べた。149人のホルモン療法を受けた前立腺癌患者で1) ホルモン療法で79.9%の患者がQTc intervalは延長した, 2) トルサードポアン、心室細動を来した患者は2人(1.3%)であった, 3) ホルモン療法中止後はQTc intervalの延長は改善した, 4) トルサードポアン、心室細動を有する患者は、ホルモン療法前後でのQTc intervalの延長が大きく、さらにΔQTcが50 ms以上の患者で有意にトルサードポアン、心室細動をきたすことが明らかになった。以上を論文作成中である。
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