研究実績の概要 |
当院で前立腺癌に対して抗アンドロゲン作用のある薬剤とLH-RH誘導体で加療中に、ふらつきを自覚し来院し、著明なQT延長を認め、心室細動を繰り返し起こし、その度に除細動により救命し得た患者を担当し、この症例から上記研究目的に多数の症例での検討を行う方針とした。当院で2006年4月から2017年12月までにGnRHを投与され、治療前と治療後3ヶ月以上たった時点での心電図が残っている患者149名を後ろ向きに、心電図パラメータと心室細動を含む致死性不整脈の有無について解析した。149人の平均年齢75±6歳、治療前の致死性不整脈の記録はなかった。治療前後での心電図変化として、QT, QTcが有意に延長した(QT: 394±32 から406±39 ms, p<0.001, QTc: 416±27から439±31 ms,p<0.001)。さらに149人中2人(1.3%)でQT延長を伴う多形性心室頻拍及び心室細動を認めた。心室細動を認めた2人とそれ以外の患者の2群間で、治療前の心電図のパラメータに有意差は認めなかったが、投与開始後に心室細動を来した群はよりQT, QTcが延長していた(QT: 480±20 vs 405±38 ms, p-0.026, QTc: 501±21 vs 438±30 ms, p-0.016)。治療前の心電図パラメータでは致死性不整脈を起こしやすい因子は同定できなかったため、治療中は、どの患者にも定期的な心電図のフォローアップが必要であると考えられる。以上の結果は今まで報告がなく、この成果を海外国内での学会発表、論文報告を行った。
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