本研究の目的は胎児が母体から娩出後に受ける酸素濃度の上昇が哺乳動物の心筋細胞の分裂能の停止に核内受容体を介したシグナルを介して関与している事を解明する事である。 生後3日のマウス心筋において核内受容体の中でレチノイドX受容体の発現が高く、この受容体とheterodimerを形成する核内受容体のうちレチノイン酸受容体が最も分裂能に関与している事をproliferation assayで証明した。レチノイン酸合成に関与する遺伝子の中で生後14日までにdynamicに発現が変化する遺伝子がAldh1a2であった。 HIF-1αのRNAiを行うとAldh1a2をnegativeにregulateしている事がわかった。 α-MHCをpromotorとするCreマウスとAldh1a2のfloxマウスを用い心筋細胞特異的にAldh1a2をKOするマウスを作成した。生直後よりTamoxifenを投与し生後7日のマウスの心筋細胞をki67抗体の発現を調べたところ心筋細胞の分裂能はKOマウスの分裂能が保たれていることがわかったが、同マウスの心尖部を生後7日でCryo injuryし、心筋の再生能を評価したが2群間に有意な差は認めなかった。 新生児マウス培養心筋細胞にてATRA(pan RAR agonist)を投与した群とVehicle群をRNA-seqにて解析したところ有意に増加もしくは減少した95種類の遺伝子のうち62種類の遺伝子が成長にかかわる遺伝子であり、その中でWntシグナルを抑制する遺伝子であるWIF-1に注目した。WIF-1はCanonicalなWntシグナルを抑制する遺伝子である。マウス心筋細胞でATRAを投与し、WIF-1を抑制すると増殖能の低下がキャンセルされた。また、Western blotではβ-Cateninや細胞増殖能のCyclinB1・D1の発現が抑制された。
|