拡張相肥大型心筋症は、重症心不全の原因疾患の1つであり、予後が悪く、拡張型心筋症との形態的類似性により、その鑑別は非常に困難である。鑑別を困難に している原因は、拡張相肥大型心筋症の確定診断に必要となる過去の肥大期を画像的に捉えることの難しさである。拡張型心筋症と診断された症例の中には、過去の肥大期を捉えられていないため、拡張相肥大型心筋症と診断することができなかった症例があると考えられる。そこで、時間軸によって変化のない遺伝的情報に着目した。さらに、心筋線維化など従来の病理組織学的指標では両者の鑑別は困難であるが、その線維化を引き起こす前段階である冠微小血管障害は、過去 の報告より鑑別に有用である可能性が示唆されている。以上より、本研究において、拡張相肥大型心筋症と拡張型心筋症を鑑別するのに有用なGenotypeおよび冠微小血管障害指標の探索を行うこととした。確定診断のついた拡張相肥大型心筋症38例、拡張型心筋症238例を対象とし、全エクソーム解析を行い、そのGenotypeを詳細に検討した。特に肥大型心筋症および拡張型心筋症の両方のPhenotypeを示しうる遺伝子については、その遺伝子変異をより詳細に分類し検討を行うことで、Genotype指標は、従来の鑑別指標と同様に有用かつ、従来の指標と組み合わせることでより高い診断指標となることを見出した。さらに、そのGenotypeの指標が予後とも関連していた 。拡張層肥大型心筋症14例、拡張型心筋症26例について、LVAD装着時(左室検体)、心臓移植時(左室検体・右室検体)の心筋検体の冠微小血管障害を定量的評価を行い、疾患における差異、左室と右室の差異および経時的変化を検討中である。さらにこの病理組織学的指標の、鑑別指標および予後予測としての有用性を検討中である。
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