研究課題/領域番号 |
19K17564
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
永井 正志 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (50813929)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | DMD / ACTN3 / 拡張型心筋症 |
研究実績の概要 |
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は様々な筋外合併症を呈し、その中でも拡張型心筋症(DCM)はいまだDMDの主たる死因である。ACTN3遺伝子はサルコメア構成タンパクの一つであるα-アクチニン3をコードする。ACTN3遺伝子には高頻度多型(R577X)が存在し、ヌル遺伝子型(577XX)ではα-アクチニン3が欠損する。ACTN3遺伝子型は成人の慢性心不全の予後との関連が報告されているが、DMDの心臓合併症との関連は明らかではなく、DMD患者のACTN3遺伝子型と心臓合併症の関連を検討した。当院に通院し、当科で心臓超音波検査を施行したDMD患者を対象に、ACTN3遺伝子型を直接シークエンス法で決定した。心臓超音波検査で左室駆出率(LVEF)<53%を心機能障害、左室拡張末期径(LVDd)>55mmを左室拡大と定義しその生存率をヌル遺伝子型(577XX)とそれ以外(577RR+577RX)に分類し、Kaplan-Meier法で比較した。77人のDMD患者についてACTN3遺伝子型を決定し、577RRは13人(17%)、577RXは44人(57%)、577XXは20人(26%)であった。577XX群(20人)と577RR+577RX群(57人)の2群間において心機能障害の生存曲線を比較したところ、577XX群は577RR+577RX群より発症が早く(生存期間中央値:13.4歳vs15.3歳)、生存率は有意に低かった(p<0.05,ハザード比:2.14)。また左室拡大の生存曲線の比較では、577XX群が577RR+577RX群より明らかに発症が早く(生存期間中央値:19.8歳vs未到達)、生存率は有意に低かった(p<0.01, ハザード比:4.93)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究であった『ACTN3遺伝子多型がDMD患者における拡張型心筋症の修飾因子である』という仮説が正しそうな結果を得ることが出来た。今後、論文としての発表などを検討できる結果である。
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今後の研究の推進方策 |
上記の結果を論文にまとめ、発表を予定している。 また現在までACTN3により表現されるα-アクチニン3蛋白質が心機能と関連するという報告はほとんどなく、DMD患者において心機能の表現型に差が出ることのさらなる症例を蓄積し検討する。またその他のDMDの表現型への影響を検討し、なぜ心機能に差が出るのかを調べる実験モデルを模索していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定していたよりも早期に仮説を証明できる結果を得られたため、当該年度に論文を発表することとし、英文雑誌に投稿を行うこととした。その際の論文投稿費用にあてるため準備していたが、rejectとなったため再度別雑誌を選定し論文投稿をする予定となった。 そのため次年度繰越分はその際の党綱領として使用予定である。
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