研究実績の概要 |
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は様々な筋外合併症を呈し、その中でも拡張型心筋症(DCM)はいまだDMDの主たる死因である。ACTN3遺伝子はサルコメア構成タンパクの一つであるα-アクチニン3をコードするが、ACTN3遺伝子には高頻度多型(R577X)が存在し、ヌル遺伝子型(577XX)ではα-アクチニン3が欠損することが知られている。ACTN3遺伝子型は成人の慢性心不全の予後との関連が報告されているが、DMDの心臓合併症との関連は明らかではなく、DMD患者のACTN3遺伝子型と心臓合併症の関連を検討した。当院に通院し、当科で心臓超音波検査を施行したDMD患者を対象に、ACTN3遺伝子型を直接シークエンス法で決定した。心臓超音波検査で左室駆出率(LVEF)<53%を心機能障害、左室拡張末期径(LVDd)>55mmを左室拡大と定義しその生存率をヌル遺伝子型(577XX)とそれ以外(577RR+577RX)に分類し、Kaplan-Meier法で比較した。77人のDMD患者についてACTN3遺伝子型を決定し、577RRは13人(17%)、577RXは44人(57%)、577XXは20人(26%)であった。577XX群(20人)と577RR+577RX群(57人)の2群間において心機能障害の生存曲線を比較したところ、577XX群は577RR+577RX群より発症が早く(生存期間中央値:13.4歳vs15.3歳)、生存率は有意に低かった(p<0.05,ハザード比:2.78)。また左室拡大の生存曲線の比較では、577XX群が577RR+577RX群より明らかに発症が早く(生存期間中央値:19.8歳vs未到達)、生存率は有意に低かった(p<0.01, ハザード比:9.03)。
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