研究実績の概要 |
当初はラットによる肺動脈縮窄/右心不全を用いる予定であったが、メカニズム解析のためには遺伝子改変動物を用いた実験が望ましく、当初の計画を変更してマウスの肺動脈縮窄/右心不全モデルの確立を目指した。肺動脈縮窄モデルは致死率が高く、手術手技・麻酔法の改善に時間を要したが、許容範囲の死亡率で右心負荷を呈するモデルを確立することができた。具体的には心エコー評価による右心系の拡大、右室収縮能の低下、右室壁の肥厚が確認された。組織学的解析において右室心筋細胞の肥大、右室心筋の線維化が認められたが、左室側においてはそのような変化は確認されなかった。また右室組織の分子生物学的解析ではcollagen1a1, collagen3a1, TGFbeta, ANP, BNPの発現増加が確認され、形態・機能のみでなく遺伝子レベルでの有意な変化が証明された。肺動脈縮窄/右心不全モデルの右室心筋組織の遺伝子発現解析においてはPDE1A, PDE1Cの増加が確認されたが、PDE1Bの発現は不変であった。また同じくcAMP, cGMPを共に制御するPDE10Aの発現亢進も認められた。これらの結果から右心不全におけるPDE1, PDE10の病態生理学的役割が示唆された。
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