Fontan術後遠隔期には多臓器に渡って合併症が起こり、特に門脈循環系を有する肝臓は静脈圧上昇をはじめとしたFontan循環の影響を受けやすく、肝合併症は予後を左右する大きな因子となりつつある。本研究ではもうひとつの門脈循環系を有する下垂体に着目し、Fontan循環が下垂体機能に及ぼす影響を調査した。随時採血として、各血中ホルモン値を測定(空腹早朝時採血にて、コルチゾール、ACTH、IGF-1、GH、TSH、fT4、fT3、女性はFSH、LH、エストラジオール、男性はFSH、LH、テストステロン)を計測した。随時採血での結果では、Fontan患者は成長ホルモン、IGF-1、副腎ホルモンが低値を示した。また随時採血での性ホルモン値は基準値内であったが、女性患者においては下垂体機能低下も関連すると思われる月経異常や不妊などの症状を有する例が多く存在することがわかった。5年以内に施行されたカテーテル検査で得られた中心静脈圧、心臓MRIで算出した心拍出(大動脈のフロー解析、心室容積変化による)などの血行動態データとの随時採血で得られたホルモン値の関連を検討したところ、明らかな関連性は同定できなかったが、頭部MRIで得られた下垂体の容積は、中心静脈圧に関連することが分かった。本研究によりFontan術後の高い中心静脈圧は下垂体容積の増大および下垂体機能の障害につながる可能性が示唆された。下垂体機能は随時採血での評価が困難であることが本研究の課題であるため、下垂体機能の正確な評価方法について取り組みを継続している。
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