研究課題/領域番号 |
19K17569
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
白木 綾 佐賀大学, 医学部, 寄附講座教授 (50638252)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 可溶性エポキシドヒドロラ―ゼ / エポキシエイコサトリエン酸 / sEH / EET / ワクチン |
研究実績の概要 |
【心筋梗塞モデルラットについて】ワクチン①群N=40、コントロール群N=30について心筋梗塞モデルを作成し、結果を比較した。心筋梗塞後1週間での心機能(心拡大の程度、心収縮力)はワクチン群で改善しており、詳細な組織学的な検討では梗塞境界域での血管の増生を伴っていた。心筋における蛋白を見てみると、VEGF,eNOSの発現が増強していた。また、ワクチン治療を行ったラットの血液を用い て、sEH阻害効果がある中和抗体ができているかどうかを質量分析にて確認した。結果としてワクチン①群のラットの血液中の抗体はsEHを阻害し、EET-d 11をDHET-d11に分解するのを抑制する効果があることが分かった。以上の結果をもとに、今年度、sEH阻害ワクチンの製剤化をめざし、国内特許を申請した。またこの結果を学術誌Scientific Reportsに投稿し受理された。
【心不全モデルについて】ワクチン①ワクチン②を心不全ハムスター(50%生存が平均37週齢である短命ハムスターJ2N-k)ワクチンが心不全に効果があるかどうかを実際に検討中である。ワクチン①により生産される中和抗体にはハムスター由来sEH阻害効果があることを確認した。24週齢、26週齢、28週齢、30週齢でワクチンを投与し37週齢で心エコーや臓器重量で評価する予定。ただし、J2N-kは数匹ずつでしか生産できておらず、入荷に時間がかかり、実験期間が延長している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心筋梗塞ラットにおいて、ワクチンによる改善効果を認め、またこのワクチンによって得られる抗体がsEH阻害効果があることも質量分析により証明できた。現在特許申請中であり、さらに論文が学術誌Scientific Reportsに受理された旨連絡があった。心不全に効果があるかどうかの命題についても、実験を順調に行っており、来年度には結果をまとめられる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
ラットへのワクチンの効果は確定的になったが、ヒトへの応用を考慮しヒトの配列に対応したワクチンを作成する。このヒト化ワクチンにヒトsEH阻害効果があるかどうかをヒト血球sEHを用いて質量分析の手法を用いて明らかにする。また、ワクチンによって産生される中和抗体産生は1-2カ月必要とするため、モノクローナル抗体製剤への応用を進めていく。 心不全モデルはハムスターモデルにて、生命予後、心拡大の程度などを検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
繰越金の残高が比較的小さかったため、抗体や動物、試薬などの経費としては足りずに使えなかった。翌年度に繰り越すことにより、翌年度資金と合算することにより抗体や動物、試薬などの経費として使用する計画である。
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