研究実績の概要 |
近年、悪性腫瘍の分野において免疫チェックポイントタンパクであるProgrammed death-1 (PD-1)、 Programmed death-ligand 1 (PD-L1)が注目されている。免疫チェックポイントの阻害薬である抗PD-1抗体は抗腫瘍効果が期待される一方で、自己免疫反応や慢性炎症を活性化し、自己免疫性疾患の発症に関連するという報告もされている。動脈硬化においてもその病態に炎症が深く関わっており、PD-1、 PD-L1が何らかの役割を担っている可能性があるが未だ解明されていない。 本研究において熊本大学病院に冠動脈疾患で入院となった連続269例において血清中の可溶性PD-L1(sPD-L1)を測定した。安定冠動脈患者28例と急性冠症候群241例のsPD-L1を比較したところ、急性冠症候群患者ではsPD-L1値は有意に高値であった (106.1 [60.9±157.7] pg/mL vs. 64.8 [30.9±102.5] pg/mL, P=0.003)。ロジスティック回帰分析をおこなったところ、sPD-L1はCRPなど従来より急性冠症候群と関連するとされている臨床因子とは独立して急性冠症候群に関連していた (オッズ比: 1.007, 95 %信頼区間: 1.001±1.013, P=0.018)。以上から、sPD-L1は急性冠症候群の病態と有意に関連していることが示唆された。
|