研究課題/領域番号 |
19K17570
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
藤末 昂一郎 熊本大学, 病院, 助教 (10779151)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | PD-L1 / 急性冠症候群 / 免疫チェックポイントタンパク |
研究実績の概要 |
近年、悪性腫瘍の分野において免疫チェックポイントタンパクであるProgrammed death-1 (PD-1)、 Programmed death-ligand 1 (PD-L1)が注目されている。免疫チェックポイントの阻害薬である抗PD-1抗体は抗腫瘍効果が期待される一方で、自己免疫反応や慢性炎症を活性化し、自己免疫性疾患の発症に関連すると報告されている。動脈硬化においてもその病態に炎症が深く関わっており、特に急性冠症候群の発症に密接な関連がある。急性冠症候群の病態にPD-1、 PD-L1が何らかの役割を担っている可能性があるが未だ解明されていない。 2017年12月から2019年6月までに熊本大学病院に冠動脈疾患で入院となった連続446例において血清中の可溶性PD-L1(sPD-L1)を測定した。安定冠動脈患者322例と急性冠症候群 124例の血清sPD-L1値を比較したところ、急性冠症候群患者では安定冠動脈患者と比較してsPD-L1値は有意に高値であった (188.7 (111.0±260.8) pg/mL vs. [144.2 (94.8±215.5) pg/mL, P=0.009)。単変量ロジスティック回帰分析で有意だった因子をもとに多変量ロジスティック回帰分析をおこなったところ、sPD-L1はCRPなど従来より急性冠症候群と関連するとされている臨床因子とは独立して急性冠症候群に関連していた (オッズ比: 1.004, 95 %信頼区間: 1.002-1.006, P<0.001)。以上から、sPD-L1は急性冠症候群の病態と有意に関連していることが示された。以上の結果を原著論文にまとめ海外誌に投稿している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
結果を原著論文にまとめ海外誌に投稿しているが追加解析を要求されたため、sPD-L1の追加測定および追加解析を行なっている。測定で使用するELISAキットや試薬については海外から購入しているが、世界的なCOVID-19流行に伴い物流が滞ったため測定が遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19流行に伴う物流停滞がある程度解消されてきたため、徐々に試薬やELISAキットがそろってきている。引き続きsPD-L1の測定、解析を進めていく。また、PD-L1に関連すると思われる炎症性サイトカインや冠動脈疾患の重症度にも着目しsPD-L1値の比較検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界的なCOVID-19パンデミックの影響で国内、国際学会が中止、延期あるいはon line開催になり使用計画に変更が生じた。また、COVID-19の影響で海外から購入している検査キットの物流が滞ったため次年度に繰り越す必要が生じた。
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